○…洋上風力発電を見に、能代まで出かけた。その詳細は本誌レポートで掲載している。印象的だったのが、能代市内のあちこちで風車が普通に見られたこと。風力発電が生活の一風景となって溶け込んでいるように見えた。能代の町は風と共生した街づくりを進めていた。
ところで最近、風力発電への反対の声が高まっているように感じている。実際、筆者のSNSでも熱心な反対派にフォローされているので、彼らの声も聞こえてくる。そのため、今回の取材では、そうした面についても聞いてみようと思っていた。
例えば騒音に関する問題として、風車の風切り音や、低周波による健康被害といった問題が提起されている。しかし市役所では「工事の騒音へのクレームはあったが、運転中の風力発電の音や、振動に関するクレームは聞かない」という。日本風力発電協会に聞くと「一番ちかくで作業するメンテナンス要員でも、そうした健康被害が出たという話も聞かない」としている。そういえば以前、高圧送電線の下の電磁波が問題視されたことがあるが、これも被害の実態が確認されなかった。
また反対派がよく問題にするバードストライク。これはたまに起こるのだが、秋田洋上風力発電では「これまで一回もない」という。実は鳥類は「前を見て飛んでない」ので、より鳥類が気が付きやすいようにブレードのペイントに気を付けることや、鳥類の飛来ルート上の風車設置を禁じることでバードストライクは減らせる、という報告もある。
洋上風力は今後の日本の基幹的システムとなり得る。電力だけでなく水素やアンモニアの製造にも欠かせない。しかも海外からの輸入途絶もなく、純粋な国産資源であり、エネルギー安全保障上も力強い存在だ。もちろん、核融合や超臨界地熱発電などの技術が出来てくれば、そちらへのシフトもあるだろうが大分先のこと。反対派の声にもエビデンスで応えつつ、推進を図り、国内に産業基盤を構築していくことで、その付加価値を上げられていくだろう。
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