○…バイデン氏が米大統領選から撤退することを表明。これでトランプ氏が大統領に復帰する可能性が若干低下した。
米国のOil&Gas産業はトランプ氏の大統領就任を待ち望んでいる。それは世界情勢とか移民問題、宗教的な思想などとは関係なく、単に米国の石油・ガスビジネスが伸びることになると信じているためだ。バイデン政権では、石油・ガス産業を環境問題から制限する動きを続けてきた。今年には、LNG輸出プロジェクトの新規認可を停止したほどである。またインフレ抑制法(IRA)の制定によって、脱炭素関連の産業が活気を帯びてきている。これは石油・ガス産業にとってはむしろ逆風となっていた。
民主党の後継候補者はハリス副大統領が有力である。これまで大統領の影で、あまり実績が表に出て来なかったが、ハリス氏は「バイデン以上に気候変動対策に熱心だ」という評価がある。上院議員時代には水圧破砕法の禁止に賛成し、前回大統領選では気候汚染税導入を構想、化石燃料に対する連邦政府の補助金廃止も想定していた。また副大統領となってからも、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)に数千億ドルの税額控除や還付金を提供する法案を含む政権の気候変動対策を支持してきた。いわば、ラディカルな環境派ともいえる。
大統領選がこの二人で争われることになれば、米国は気候変動対策重視か、既存の石油・ガス産業重視かで、大きく二分されることになる。LNGがトランジションエナジーの役割を果たすには、トランプ政権が必要となり、脱炭素産業の活性化のためにはハリス大統領が必要となる。
もう一つ対照的なのは、トランプが白人男性であり、ハリスがカラードの女性であること。カラード女性を大統領にできるかどうかは、米国が真に自由でリベラルな国家へ転進するか、保守・排他的であり続けるかどうか。今回の大統領選はそういう分水嶺となるのかもしれない。
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