○…紅麹サプリ問題が謎を深めている。当初は紅麹が産生する可能性のある有害物質「シトリニン」が原因物質と思われた。しかし小林製薬の紅麹菌は遺伝子操作でシトリニンをつくる遺伝子が除去されていた。しかも回収された製品からもシトリニンは検出されていない。
成分分析の結果、今度はプベルル酸と似た物質が検出されたという。一方、問題のサプリでの発病では、ほとんどの患者さんで、「ファンコニー症候群」の症状が見られたという。これは腎臓の中の近位尿細管と呼ばれる部分の障害とされ、薬害の場合は発症の原因となる物質として抗生物質や抗がん剤、漢方薬、さらには重金属や有機溶媒などの工業物質の可能性もあるという。
プベルル酸というのは抗生物質の候補物質とされていた事もある。毒性が強いので抗生物質としては使われなかったが、今回の原因物質の可能性はある。ただ、ある特殊な青カビから産生するが、その分離は困難であり、培養条件が異なる紅麹の中に混入する可能性も低い。もしも培養時に混入すれば見た目や匂いで、すぐに解るらしい。つまり紅麹そのものは問題ないようだ。
となると、紅麹以外の原料を疑うことになりそうだ。紅麹サプリには、紅麹の他にも有機酸やアミノ酸、フラボノイドをはじめ、色々な化合物が含まれており、それらには外部から調達したものもあるはず。その中に原因物質が混入したことも考えられる。
工場が閉鎖されていることもあるが、原材料の調達先まで調べるとなると、原因究明にはかなり時間がかかることになる。謎が多いなかで、SNSなどでは新型コロナワクチンの影響とする陰謀論も増えている。まだ色々なことがよく分っていないなかで、安易に答えに結びつけようとすると、科学的思考から逸脱し、デマを拡散することになる。そこにメリットは何もない。
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