○…日経新聞で「AIと世界どう向き合う」という記事があった。ハーバード大教授 グレアム・アリソンなど複数の学者へのインタビューで構成したもので、いわゆるシンギュラリティについての言及もある。
AIの知性が人間を超える「技術的特異点」とされるシンギュラリティが実現すると指摘する学者は多い。グレアム・アリソン教授は同記事のなかで「理解の及ばない高い次元の結論を出すAIが誕生したら、人類の自己認識も修正を迫られよう」と述べている。興味深い話である。
人は人間以上の存在として神を設定していた。しかしそれは共同幻想として成立する存在であり、その神を信奉することで、生活共同体が成り立つ形となる。一方、その神を信奉しない者は異邦人であり、共同幻想に基づく共同体としては客人扱いか、差別の対象にもなってしまう。つまり神は差別を許容するご都合主義的な存在でもある。神とは共同体のための共同幻想であるという一面があるからだ。
しかし人間以上となったAIがもし出現したら、神は幻想ではなく具体的な存在となってしまう。幻想が具現化し、人間のご都合に沿わなくなれば、それは却って恐怖の対象となるのではないだろうか。そうした根源的な恐怖が、シンギュラリティを扱う、SFやアニメなどいくつもの物語に描かれているように思う。
ただ、人類を超え、人類を脅かすようなシンギュラリティは起こりえない、という学者も多い。なぜならば、AIはあくまで道具に過ぎず、知性を生み出すこともない、という理由だ。
ただ、そうした人でも、AIを扱う側の人間の問題は指摘している。最近ではAIを使ったディープフェイクが米大統領選で使われているという。結局、悪用するのは人間であり、AIで人を滅ぼすとしたらそれは人間の意思なのではないか。核兵器は既に何回も人類を滅ぼす力を得ている。AIも核兵器と同様、人が悪用すれば人類を滅ぼす力となり得る。AIの本当のリスクはそこだ。
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