○…気象庁によると、通常なら冷夏となるエルニーニョが発生しているにもかからず、今年の夏の気温は平年並みかやや暑くなるという。台風や線状降水帯による被害も今年既に出ている。この夏も油断はできない。
IPCCの第6次統合報告書では、現状では1.5℃に気温上昇を抑えるという目標の達成が難しくなってきたという危機感が示されている。ただ、IPCCでもオーバーシュートという考え方を導入しており、目標より気温が上がっても、その後今世紀末までに1.5℃上昇に抑えるというシナリオを出している。
ところが最近Natureに載った論文で、ちょっと怖い話が出た。「南極氷床のヒステリシス(The hysteresis of the Antarctic Ice Sheet)」というタイトルで「産業革命以前の水準より摂氏約2度上昇した地球温暖化レベルでは、海洋氷床の不安定性により西南極大陸が長期的に部分的に崩壊する可能性がある」というもの。これにより海抜は1.3m上昇する。2~6度の温暖化では2.4mとほぼ2倍になり、1℃度あたり約10mに増加する。しかもヒステリシス(物質の状態が、現在の条件だけでなく、過去の経路の影響を受ける現象)動作が生じ、気温が現在のレベルに逆転したとしても、現在観察されている氷床には回復しないという。
パリ協定の2℃の上昇でも最終的に2.5mの海面上昇が起こり、ニューヨークや東京などの大都市を水没させ、元に戻らないという。
この論文内容が事実だとすると、オーバーシュートシナリオでもリスクはあり、一度水没した都市は元に戻らないということになる。温暖化については、未だに懐疑論もあるが、もはや受け入れざるを得なくなっている。それだけでなく、温暖化のリスクを甘く見ることも危険、ということだろう。
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