○…年末年始で「大怪獣のあとしまつ」という映画を見た。昨年公開されて、多くの不評をかった作品である。映画レビューでは「駄作」とまで言われているほどだ。しかし、通常の怪獣映画は怪獣を倒すまでの話が殆どであり、その倒した怪獣の死体処理に焦点を当てた映画はこれが初めて。いわば巨大な廃棄物処理を描くもの。あまりにも不評であったことにも、逆に興味を引かれた。
さほど長くもない、どちらかというとコメディ要素の強い映画だが、見終わってしばらくは感想を言葉に出来なかった。これがどういう映画なのか、しばらく考え込んでしまった。「面白い」「面白くない」と一概に評価できないのである。
映画ではとにかく人間が無力だ。人間は結局、怪獣を倒すことも、その死体の処理すらも満足にできなかった。そして無力なだけでなく、国内外の海外の政治家、怪獣の死体処理にあたる自衛隊や官僚、マスメディア、一般人も等しく愚かな姿をさらす。意味不明なセリフ回しや、とってつけたようなキスシーンが織り込まれるなか、主導権争いが繰り広げられ、作戦の失敗を確定づけられる現場。最後の最後では、人知を超えた力で死体は一気に処理される。それらすべてが「人は自分が思っているほど御大層な存在じゃない」というメッセージなのかもしれない、と思わせる。
とにかく徹頭徹尾、人間の無力さと愚かさを描いていくことに主眼を置いたような映画だ。これが駄作と言われるのは、見る人それぞれが抱く映画への期待を悉く裏切っているからなのではないかとすら思う。
見方を変えれば、これほど人間の愚かさを描きだしたコメディ映画もあまり記憶にない。予断を許さない今の世界の現状にもマッチしているようにも感じた。
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