○…厚生労働省が、「給与デジタル払い」導入の検討を進めている。現金や銀行口座振り込みに加えて、第3の支払い手段として検討しているもの。アメリカでは“Payroll Card”という仕組みがあるとのことで、同様の仕組みを取り入れられないかということらしい。
“Payroll Card”は、ATMで使えば現金が引き出せ、お店ではMastercardやVisaといった国際ブランドのカード決済に利用できるため、「銀行口座を介さなくてもお金がさまざまな形ですぐに利用できる」という。米国では銀行口座保有率は8~9割程度で、残りの1~2割の層をカバーするのが狙いの1つとしている。
ただ日本では現金主義が根強い。筆者も最近でこそPayPayなどのQR決済を使ってはいるものの、これが使えない場所もまだまだ多い。先日、MRI検査を受けたのだが、その費用支払いですら、現金のみであった。個人経営の飲食店や、雑貨点などでも、カードは使えてもデジタル決済ができないところは多い。現金しか受け付けない店は都内でも結構ある。結局、デジタル通貨で支払いを受けても、銀行などで現金化する手間と手数料が必要となる可能性も高い。
日本はまだまだキャッシュレス社会にはほど遠い。デジタル通貨で給与を支払われても、かえって不便になることの方が多いだろう。
一方で、銀行口座開設が厳しくなっている。マイナンバーなしで銀行口座を新規開設するのが難しくなっているため、日本国籍保有者ならまだしも、外国籍では銀行口座を開けないという事態も懸念されている。そうした際の救済措置としてのデジタル通貨支払いはあり得る話ではあるが、いかんせん社会がそれに対応していないのが大きな問題だ。特に、高齢者や障害者などデジタル端末がうまく使えないような人々にとってはマイナスにしかならない。
社会全体でのデジタル通貨の利用がより便利になっていかないと、日本での給与支払いのデジタル化はあまり意味がない。リアルとデジタルでのお金の流通を国としてうまくマッチングしていくシステムを一から構築する必要がありそうだ。
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