○…円安が止まらない。日銀も何も動かない。通常ならば円安でメリットを出せるところもあるが、今回は単なる円安ではなく、その背後に資源高が存在する。日本経済が加工貿易に支えられているとすれば、円安と資源高によって、日本の調達力が下がり、一方で海外への売価も下がっているということで、円安による輸出メリットは出て来ないことになる。
しかも日本経済は今、加工貿易に支えられている訳ではない。日本経済を主に支えているのは個人消費である。円安で輸入価格が高騰すれば、物価が高騰する。先進諸国と異なり、日本の所得水準はここ30年間、横ばいなので物価だけが高騰すれば、購買力が低下する。必需品であっても、より価格の安いものが求められるので、サプライヤー側の利益は圧迫される。この結果個人消費が下がり、社会全体で金が回らなくなり、GDPは低下。日本の景気はさらに冷え込んでいくことになる。
こうして考えてくると、今回の円安は日本社会には殆どメリットがない。 実際、政府の補助が無ければ旅行もできないような国である。それにも関わらず、テレビでは高級リゾートや高級食品を紹介する。富裕層を相手にしていくしかやることがなくなっている。
「トリクルダウン」は幻想に過ぎない。これを期待した経済政策は全て失敗する。なぜなら幻想を追いかけているだけだからだ。現実に即し、個人消費を引上げることの出来る経済政策が今すぐ必要だ。それには消費税率の引き下げ、社会保障の充実なども避けては通れない。失われた30年を、ここで打ち止めにするか、それともさらに続けて、死屍累々の国とするか。
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