○…「生産性向上」という呪縛が日本の経済社会を蝕んできた、と思う。「日本は生産性が低い」という話を受けて、この10年近く、日本企業は生産性向上に取り組んできているが、全くと言ってよいほどその成果は出ていない。
「生産額が変わらなければ、労働者数が減れば生産性は上がる」これが過去の日本で行われてきたことの基本である。そのためリストラや省人化などが進められてきた。ITやロボットの導入で生産が効率化するのは良い事ではあるが、実際には単に人を削減して、残った人に無理をさせて「生産性が向上した」とする経営者も多かった。
生産性の向上は「一人当たりの生産額や付加価値が向上する」ことであるので、生産性というものをよく考えてみれば、人を減らすことで得られた結果というのは実は「見かけ上の生産性が向上した」ということでしかない。
人減らしや賃金の抑制による生産性の向上は、コストカットによって製品価格を低下させる。それによって「見かけ上の競争力強化」を図っていたりするので、生産性は全く向上しない。むしろ賃金抑制によって日本のGDPを支える個人消費が低下してしまうので、日本全体としてはマイナスとなってしまう。これがこの10年近く行われてきた日本の経済政策の結果であり、したがって日本の経済力は国際的にも水準が下がり、賃金水準では韓国にも追い越されてしまうなど、貧乏国化してきている。
中小企業を統合して大企業化するとかいう話が昨年話題になったが、そんな陳腐な手法で効率化などできるわけもない。最近では45歳定年という、経営者に都合の良い話が出てきたが、それも見かけ上の生産性向上に囚われているだけのように見える。
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