○…改めて考えてみると大変なお買い得であったと思う。
昨年7月に日立製作所は、ABBパワーグリッドを約7,400億円で買収。日立ABBパワーグリッドとした。その事業規模は、2017年度で売上高100億ドル超、営業利益で8億7,500万ドル。しかも世界はその後、脱炭素化を加速させている。日本でも再生可能エネルギーを急速に増加させようとしている。それが日立ABBパワーグリッドの事業にとって大きな追い風となっているのだ。
その筆頭が高圧直流送電(HVDC)だろう。例えば、洋上風力は陸上の送電網から遠く離れた海上に、複数の風車を設置することになる。これを送電網に接続するには数10kmもの送電線を引かなければならないが、交流送電線では送電ロスが大きくなってしまう。その点、HVDCならば送電ロスも少なく、しかも大量に送電できる。陸上までHVDCで電力を送り、そこでまとめて直交変換装置を通して交流送電網に送るのが、洋上風力では通常の形となる。これまで日本では本州と四国、本州と北海道などの電力融通のためだけにHVDCが設置されていただけで、あまり実績はない。それが今後は大きく需要が伸びることになる。当然、日本だけでなく欧米やアジアでも同様の需要拡大が見込まれる。日立が買収を決めたのは2018年末。その時期にあの金額でABBパワーグリッドの買収を決めた日立製作所は、実に良い買い物をしたものだ、と改めて関心する。
一方ABBは何故、パワーグリッド部門を売却することを決めたのか?という方が不思議だ。ABBは同時期、電力関連部門を切り離したがっていたように見えた。産業やIT分野へのシフトによって高収益化を図って、利益率の低い発送電部門を切り離したというのが、当時の説明だったように記憶する。事業売却は価値の高いうちにするという思い切りもABBにはあるが、それにしても今、「ちょっともったいなかったかな?」ぐらいは思っているかもしれない。 |