○…アメリカのエネルギー産業は、こぞってトランプを支持した。World Oilというニュースサイトでは「ジョー・バイデンは本当にアメリカの石油・ガス産業を終わらせたいと思っています」という記事が掲載されるほどだった。バイデン大統領が誕生すると、米国の石油・ガス産業は窮地に立たされると考えているらしい。
だが、もしトランプ大統領が継続したとしても、石油・ガス産業の置かれている状況はあまり変わらない。気候変動は既に、様々な影響を社会に与えるようになっているのは、紛れもない事実。アメリカでも毎年の様に巨大ハリケーンに見舞われ、産業設備も大きな損傷を受けるようになっている。アメリカの産業界にとっても、気候変動はダメージを受けているので、今後も対策しないということは、笛吹き男に誘われて集団で海に飛び込むレミングの群れの様なものだ(笛吹き男が誰かは言わないことにする)。
しかも、世界の金融機関では脱炭素化が融資の大きな条件となっている。住友商事が今回の決算で、オーストラリアの石炭火力での損失を計上したのも、効率の良くない石炭火力事業への融資を、日本のメガバンクでさえ引き受けなくなったことが要因だ。気候変動問題から目を逸らしていては、事業継続性すら危うくなってきている。
だから、バイデン氏がパリ協定への復帰を公言していることは、本来ならアメリカの産業界にとっても持続可能性を担保する結果に繋がっていく。実際、アメリカの企業でも気候変動への取り組みは活発化しており、日本であまり進んでいないバイオディーゼルも、アメリカの企業が相次ぎプラント建設を進めようとしている。水素や再生可能エネルギーなどへの投資や技術開発も活発だ。GMは水素トラック開発企業への投資を行って将来に備えている。アメリカの石油・ガス産業も低コストというメリットを活かすことで、先進的な取り組みができそうだ。 |