○…昔、韓国に取材に行った際に感じたことが一つある。財閥に支配された産業構造だった韓国では、大田区や東大阪のような中小企業の集積地が無いということに気がついた。当時はまだ、韓国の産業の力はさほど大きくなかった。その理由の一つが中小企業クラスターが存在しないこと、という話も聞かれていた。中小企業が存在しないのではなく、財閥に組み込まれていた。
現在では韓国の産業が大きな力をつけてきているが、サプライチェーンが韓国内ではなく、国際的に広がっていることが実力向上の理由の一つだろう。
欧米の海洋関連企業が日本の中小企業を訪れて、ものづくりの力に感心するという話は良く聞く。欧米では数値制御の工作機械でパーツを作る。日本でももちろんそういう工程を踏むが、最終的には職人の手によって仕上げ加工がおこなわれることも多い。そして、その加工が実に見事なのである。こうした技術は中小企業で無ければ育たない。
そもそも、企業が生産性を高められるかどうかは、生産規模には比例しない。大量生産で価格競争力をあげるというのは昭和の高度経済成長時代の古い手法であり、経済が多角化、複雑化した現在では、中小企業の統合による生産性の向上などという話は「おとぎ話」程度のものである。
イノベーションを進めたいなら、中小企業のクラスターはむしろ絶対に必要だ、と思う。 |