○…自宅からほど近い不忍池に時々、散歩をしに行く。冬場はオナガガモやマガモ、キンクロハジロ、オオバン、カモメ、ユリカモメと多くの種類の水鳥がやってくるので賑やかなのだが、春も終わりに近づくと、渡り鳥は皆、北に帰ってしまうので、今はカモメやユリカモメが少し残っている程度だ。
不忍池は冬の間に、伸びきって枯れたハスの葉を伐採して、見晴らしが良くなる。そのためコサギやダイサギが餌を探して歩き回る姿が良く見えるようになる。
そのハスの葉は今や伸び盛りで、まだ鮮やかな黄緑色の芽や葉が、再び水面を覆い隠そうとしてきている。もう少し経てば、すっかり緑の濃くなったハスの葉が生い茂って、水面は見えなくなり、葉の軸あたりに溜まった雨粒がキラキラ光るようになっていくだろう。
その日、まだ完全にはハスの葉に覆われていない水面を、カモのような鳥が泳いでいるのを見た。渡りそびれたカモかと思っていたが、雛を3羽、4羽と引き連れている。渡りが遅れているのではなく、今まさに子育て中のご様子だ。水に潜っては小魚を捉え、雛に与えて、また小魚を捉えに行く。
興味を覚えて見ていて、漸く気付いた。なんとそれはカイツブリだった。海や大きい池で見た事はあるが、不忍池ではこれまで見たこともなかった。あまり人に近づかない鳥なので、常日頃、人の往来の多い不忍池で、カイツブリが子育てしていようとは思いもよらなかった。
今年、3月から5月にかけて、都内は例年になく人が少なかった。上野あたりも動物園も閉園していたため、普段に比べて来街者は大きく減っていた。もしかしたらそれでカイツブリも安心して、不忍池を子育ての場所に選んだのかもしれない。
これから人が増えて来ても、ここで無事に巣立って貰いたい。 |