○…NHK、Eテレの「100分de名著」という番組でアーサー・C・クラークを紹介していた。この番組はいつも4回にわたって一つの作品を紹介していくことが多いのだけれど、今回はアーサー・C・クラークの作品のうち「太陽系最後の日」「幼年期の終わり」「都市と星」「楽園の泉」の4つを各回で紹介していた。SFは好きな方だし、特に「都市と星」については忘れられない感銘を受けた小説だったので、番組を見たことで、読んだあとの感動を久しぶりに味わうことができた。
SFは未来の科学技術や、宇宙などを扱う事が多い。色々な科学技術のアイデアを作品を通じて紹介しているのも多く、アーサー・C・クラークの他にハインラインなどのSF巨匠の存在は、技術の進歩に貢献していると見る向きもある。
ただ、優れたSF小説は技術や宇宙、人類の未来といった舞台装置そのものに終始する訳でなく、その世界の中で人が何をどう考え、どのように行動していくか、その思想的な面を含めた物語としての質も高い。なかにはまるで哲学書のような作品もある。
「都市と星」では、宇宙から撤退した人類は二つの種族に別れて、それぞれ交流を持たずに存在している。いずれの種族も、まるで進化を止めたように何万年も変化しないまま。それが主人公によって、再び交流を始めることとなり、人類の新たな未来が開かれる予感で終わる。その最後のシーンはとても美しい光景で描かれている。
実はこの作品には続編がある。さらに数万年たったのち、人類が再び宇宙を目指すことになる。そこでは、太陽系の惑星と惑星の間の宇宙空間にすら、多くの種類の生命体が存在しているという、とても刺激的な未来が描かれていた。 |