○…建造中のダイヤモンドプリンセスを見学したことがある。三菱重工業長崎事業所で見たそれは、とても巨大で、まるで海に浮かぶマンションを建設しているかのような圧倒的な印象だった。
しかしその数週間後、ダイヤモンドプリンセスは火災を発生した。溶接の火が室内の建材に燃え移ったことが原因だったと思う。その後、1号船の納期が迫っていたため、「サファイヤプリンセス」として建造中だった2番船が新「ダイヤモンドプロンセス」として改修されて納入された。この火災は、客船事業に不慣れで建造コストがオーバーランしていた三菱重工にとって、さらに損失を上乗せし、業績を圧迫する結果となった。
今回、コロナウィルス感染で横浜に停泊し、乗員乗客約3,700名が船内待機を余儀なくされた。漸く下船できるようになったものの、長期に亘る船内待機は感染を拡大させ、多くの患者を発生させてしまった。感染拡大と数週間に亘る船内待機で、プリンセス・クルーズは今回の船旅の代金をすべて返却し、船内待機の間の費用も請求しない方針だ。こうすることで会社への信頼は担保され、将来の顧客を失うことはないかもしれないが、プリンセス・クルーズにとっては大きな損失となるだろう。
何の因果か、ダイヤモンドプリンセスは、二度に亘って大きな災厄の現場となってしまった。こうなると何か因縁めいた感じをどうしても受けてしまう。今後の客船としての運用には多少なりとも影響してしまうかも知れない。三菱は既に豪華客船の建造からは撤退しているが、日本で建造された数少ない豪華客船の一つが、こうした運命に晒されるというのは、複雑な心境である。 |