○…今年も各分野のノーベル賞発表の時期になったとき、日本人が受賞するかどうかを追いかける報道番組が目立った。しかし、日本人以外の授賞報道の扱いは小さい。日本人か否かばかりに目が行き、日本人以外の授賞内容についての評価はほとんどない。こんな報道姿勢ばかりで良いのかとかねてから疑問を感じていた。
そんな中、2017年のノーベル経済学賞は米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授に決まったという報道がなされた。授賞理由は心理学を経済学に反映させたこと。つまり人の「心」を組み込んだ経済学をつくったということだ。人間はだらしなかったり、短絡的だったりするけれども、「ナッジ(nudge=小さな誘導)」を与えれば社会を良く変えられる。そんな彼の理論は、米国や英国、日本でも政策や企業のマーケティングに応用され始めているらしい。納税に関してもナッジが応用されているという。
1999年、アムステルダムのスキポール空港は経費削減のため、男子トイレに目を付けた。床の清掃費が高くついていたから。そこで、小便器の内側に一匹のハエの絵が描かれた。その結果、なんと清掃費は8割も減少した。こうして、アムステルダムの小便器のハエは「ナッジ」の最も有名な成功例となった。賞金の使い道を聞かれたセイラー教授は、できるだけ『非合理的』に使うと言ったそうな。。
○…日産のEVを保有していた知人がいたくお怒りである。EVなのでバッテリーが劣化してしまうと、航続距離が著しく短くなる。それがわずか数年で劣化してしまい、数10q以上移動する場合には怖くて車をつかえない状況にまでなった。しかし、バッテリーの交換に関しては、あまり誠意のある対応はしてくれなかったという。
そこに今回の無資格者による車検問題が発生した。要するに法令違反で出荷されたEVで、劣化が早期に起こったにも関わらず、ろくに対応してくれなかったのだから、その怒りも理解はできる。
今回の日産の問題は、検査の問題であり、ものづくりそのものではないという指摘もできる。ただ、車検という国に代わって行う業務で無資格者による検査が見逃されていたのであれば、他の製造工程でも色々な見逃しがあるかも知れない。そこで気になるのが、登録型人材派遣の製造業での適用だ。特に自動車産業では、そうした雇用形態が良く使われている。しかし、登録型であるので、現場で作業しているのが見知らぬ人に突然かわり、名前も知らないうちにまた変わっているということもあると聞く。コミュニケーションの無い世界で黙々と製造業務が行われる、というのはちょっと怖いと思うが、それ以上に、他者の作業に関心が薄れていくことで、製造業の底力が失われつつあるのではないか、と感じる。
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