パリ協定の発効を前に、エネルギー技術の話が活発化している。それも、これまでは夢物語のような話でしかなかったものが、現実に近づいているのが感じられて、少々驚いている。
先日行われたエンジニアリングシンポジウムでも、宇宙太陽光発電が紹介されていた。自分が子供のころは、宇宙エレベータと並ぶSF世界の夢想的な技術でしかなかったものだ。既にマイクロ波無線送電実験も実施され、成功している。ここまでくれば、あとは送電容量の大規模化と宇宙での太陽光発電設備の設置(?)だけである。しかし、ロケットでの太陽光パネルの打ち上げと、宇宙空間でのシステム構築だけでもハードルは極めて高い。打ち上げコストが高いため、地上で使うよりより高密度・高出力のパネルも必要だし、そもそも宇宙空間での工事など、それこそガンダムでも作らないといけないかもしれない。
今回、紹介する凝縮系核反応もかつては常温核融合と呼ばれ、国家プロジェクトとしては失敗に終わっている。当時の役人にとってはそれこそトラウマであったようで、当時の通産省の人に常温核融合の話をして、嫌な顔をされたことがある。それが今や、再び脚光を浴びようとしているのだ。
こうした、ある意味夢物語であった技術が実現に近づく中で特に感じるのが、今まで夢に過ぎなかったものが具体化するにつれて、より強く拒否反応がでてくること。技術は進化しても、既存技術の範囲で利益を得ている人からは、収益を持っていかれるという危機感からか、より強く「夢物語に過ぎない」という反応も出てくる。だが、気候変動は、そうした既得権益者の感傷にはまるっきり構ってくれない。
これらの夢の技術を実用化するには、どうしてもエンジニアリング力が求められるようになっていく。従って、エンジニアリング業界としては今、あらゆる分野の技術開発に目を配っていく必要がある。それが将来の利益につながるかどうかの保証はないが、入り口で技術をオミットすることは、全く利益にはならない。
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