○…最近、どこかで「杞憂に終わる」という言葉に接したことがある。その言葉をどこで、どんな場面で耳にした、あるいは目にしたのかは全く思い出せない。ただ、杞憂という言葉が妙に印象に残った。そこでこの語源を調べてみた。
それによると、中国の故事に「杞國、有人憂天地崩墜、身亡所寄、廢寢食者。又有憂彼之所憂者」(『列子』天瑞)とあるそうだ。簡単に言えば「杞の国の人が、天が落ちてこないかと心配した」という故事からきており、取り越し苦労という意味らしい。心配する必要のないことをあれこれ憂うることとある。一番多い使い方は「杞憂に終わる」であるという。また、「そんなことは杞憂だろうから、安心しなよ」という使い方もされる。
現在では天が落ちてくる心配をする人はまずいないだろう。だが、自然災害あるいは人災では、最近は「想定外」の事態がよく起きている。「そんなことはどうせ杞憂に終わるだろうから心配しなくてもいいよ」と言わんばかりの物事が、大きな被害をもたらす例を我々は何度か経験してきた。転ばぬ先の杖と言う言葉もある、十分に対策を立てることも時には大事である。
現状、米国、中国、北朝鮮、そしてわが日本、危ういことだらけのような気がする。杞憂に終わればよいが。
○…仏EDFが主導し、中国が資本参加する英ヒンクリーポイントC原発。中国が参加することで安全保障の面から意義を唱えていたメイ氏が首相就任とともにその再検討を指示。最終投資決定が下されていた直後に中断となった案件だったが、本誌でも書いたとおり、メイ政権はほぼ事前の計画通り承認した。当然と言えば当然の結果と言える。中国が参加するからダメというような安易な考えで、それまでのプロセスを無視したことが問題だ。このまま計画が中止させられるていたら、英国のインフラプロジェクトに外資が参加できなくなる。
今回、承認の条件として、英国政府は原発稼働前後にEDFの権益の売却に介入できるという条件を設定した。また政府承認ないし大規模な権益を売却できないようにする方針を表明した。これに対してEDFも中国側も合意し、プロジェクトが承認されたことを歓迎するコメントを出している。
こうした条件は、インフラ施設整備における「売り抜け」を防ぐことが目的と言えるので、過度に政府が介入しない限り、それなりに有効な方針とも言える。ただ、日本のプラントメーカーが主導している案件では、当初は資本参加してプロジェクトを進めるものの、その後権益を売却していく事が前提なので、計画実現のハードルが上がったことになりそうだ。
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