○…最近、政治の世界をはじめいろいろなところで自分のことは棚に上げて、その責任を他に転嫁するといった場面が目につくような気がしてならない。
つい最近も、またもや東京オリンピックに向けた競技場の建設でそんな事態が見受けられた。新国立競技場の設計過程で、聖火台の設置が想定されていなかった問題で、批判の矛先になっている大会組織委員会の森会長が、責任転嫁とも見える反論を繰り広げている。
同会長によれば、今回の問題の責任は組織委員会ではなく、建設の事業主である日本スポーツ振興センター(JSC)と馳浩文部科学相にあるというのだ。こういう「少し頭のおかしな連中が聖火台を忘れた設計図を作った」と言って、自分たち組織委員会は被害者だと言わんばかりなのだ。確かに「少し頭のおかしな連中」なのかもしれない。しかしそう言う自分自身はどうなのか。同会長としては、自分だけが悪者にされていることに腹を立てているのだろうと思うが、腹を立てたからと言って、自分の責任にかかわる問題を帳消しにすることはできないことは自明だ。今回の事態は、大会組織委員会とそのトップである森会長に最大の責任がある。
自分の不手際は棚に上げて、他人のことばかり糾弾したがる風潮が蔓延っている。
○…東日本大震災と福島原発事故から5年が経過した。未だ仮設住宅での暮らしを余儀なくされている人々がおり、福島原発の廃止措置も、あと何十年かかるのか全く見通しが立っていない状況だ。
その福島原発で先日、信じられない話が出てきた。東京電力はメルトダウンを判断するマニュアルを持っていた事を認めたのだ。しかもそれが作られたのは事故発生のわずか11カ月前だという。それによれば、原子炉停止後1時間以内に、原子炉格納容器内の線量が「1000Sv/h」を超えたら、メルトダウンと判断するという。このマニュアルに沿って判断していれば、福島原発がメルトダウンを起していることは、2011年3月14日の朝には解かっていたはずだった。何カ月もかかる筈がない。ところが東京電力はこれまで、そのマニュアルの存在に「気付かなかった」としている。マニュアル作成から1年もたたずに起きた事故である。マニュアルの存在に気づかないということがあるだろうか?あまりにも信じがたい話だ。百歩譲って、実際に気づかなかったとしても、マニュアルの扱いが非常に軽んじられている。技術者倫理の観点から見ても、あまりにも無責任な態度だと言わざるを得ない。
日本という国は政治・行政の色々な面であまりにも無責任になり過ぎている。 |