○…2016年の「立春」は2月4日から2月18日までだ。中学生の頃だったか、どうにも理解できなかったことの一つに「新春…」と書いてある年賀状があったことである。正月と春というイメージが重ならず、首をかしげたことがある。2016年の中国の旧正月(春節)は、2月8日からである。日本でも明治初期までは旧暦で、年によって異なるが大体、旧正月はこの近辺であったろうから、「新しい春を祝う」といっても違和感がなかったのに違いない。
ところで二十四節気の1つで季節をあらわす言葉「立春」は、暦の上のことであり、いまやそんなことを気にする人は少ないだろう。若い人にとっては立春と言われても実際の気候と感覚が大いに違うので首を傾げるはずだ。
そいういえば、西行の有名な歌に「願はくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」がある。「した」か「もと」かは出典で違うが、この際は気にしない。「はな」とは桜のことである。問題は「如月のもちづきのころ」だ。2月の15日である。もちろん旧暦であるから現在の3月末から4月の始めであろうから、「花(桜)のもとにて春死なん」も理解できる。西行はその歌で願ったとおり、陰暦2月16日、釈尊涅槃の日に入寂したといわれている。その執念や恐るべし。
○…シャープがホンハイに買収されることがほぼ決まったようだ。だが、これに対して技術流出だの、売国的だのという批判があるというので、目が点になった。
ホンハイ側はシャープの買収額を当初の6,000億円から7,000億円に上積みし、主力銀行への債権放棄を求めず。さらに雇用およびブランドの維持やシャープの事業をそのまま残すとともに、現経営陣の退陣も求めないということまで協議内容に盛り込んでいる。産業革新機構の提案とは比べ物にならないぐらい、シャープにとって良い話であり、これに乗らない手はない。
このような良質の案件で批判めいた話が流れるのは、日本における台湾企業への差別的な視点があるようにすら感じてしまう。シャープの心配ではなく、日本企業が“中国系企業”の傘下に入ることに対する心理的抵抗があるのではないか。
また日本語「買収」という言葉自体にあまり良くない印象が含まれていることも否めない。単なる資本の移動、オーナーの移動ではなく、どことなく、買収される側の「敗け犬」感が漂っている。
これらを合わせると「(自分達より下に見ていた)台湾企業に(優秀な技術を持つ)日本企業が負けた」という感情になっているように思える。もう少し冷静になれないものか。 |