○…6月中旬、東京都江東区は人口が50万人を突破したことを明らかにした。平成10年から増加し続けた区の人口は、平成14年8月に40万人を超え、13年弱で10万人の人口増となった。人口50万人の到達は、23区内では8番目になるという。90万人を突破している世田谷区をはじめとして人口50万人を突破しているのは世田谷区、練馬区、大田区、足立区、江戸川区、杉並区、板橋区、そして江東区となる。都道府県別の人口を見ると、90万人に満たない県が実に7県もある。
一方で膨張する都市部では高齢化という問題も抱える。6月はじめ、民間団体「日本創成会議」は、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川の四都県)で75歳以上の高齢者が今後急増するとして、医療・介護の施設や人材に余裕がある26道府県41地域への移住促進を政府に要請した。政府は東京一極集中の是正に向けた地方創生の一環として高齢者移住を推進する方針だが、この提言に対し、全国の知事から「乱暴だ」「負担の押し付けになる」と批判する声も。
確かに高齢者増に伴う自治体負担はどうするのかなど、きめ細かな議論を積み重ねる必要がある。まず、地方経済を活性化させたいのなら、若年層が地方に行って働ける環境を整えるのが先決だ。将来を見据え、的確な政策を打ってこなかったツケが回ってきたのだ。
○…文部科学省は昨年、国立大学から文科系の学部の廃止・転換を各大学に通達した。「サラリーマンになる卒業生が多いから人文社会系は地元で必要となる職種にあった人材を育てる学部に転換する」というのが政府の想定だが、それなら大学教育とは別に各種職業訓練学校を民間で作ればよい。無駄に大学の質を低下させる必要はない。
国立大学が企業の求める人材を育成するというのは大学の1面に過ぎない。直ぐに役に立たなくても将来の人や社会の高度化に資するものを、就職という面で切り離すのは暴力的であり、人材の質の低下を招くことは確実だ。
これまで20年以上、プラントエンジニアリングの世界をみてきて、一つ気が付いていることがある。「一般的にエンジニアは社会問題に対するソリューション提示能力が低い」ということだ。
もちろん、人文的要素をお持ちであり、それに工学的視点を加えた素晴らしい解を示される方も多いが、人間系の問題の解決の基本的考え方は人文社会系の知識体系にある。そこにアクセス出来なければ、エンジニアは真の課題から遠く離れた解を見出してしまう。人文社会系学問はやはり重要だ。全ての学生がこれを必須とするのは当然だ。 |