総合資源エネルギー調査会発電コスト検証ワーキンググループの審議が始まった。注目されるのが原子力および再生可能エネルギーのコストをどう評価するか、という点だ。
電源別にコストを算定する場合に、純粋に建設費+運転費をライフサイクルの発電量で割りだす(狭義のコスト)という考えもあるが、それは基本的に電力会社のやることであって、わざわざ国の審議会でやる必要はない。そこに社会的費用をどう組み込んで、如何に国民負担を示すことが出来るかという所が重要だ。その観点からすれば、日本のエネルギー業界史上最悪のシビアアクシデントを起した原子力発電所のコストと、導入促進のためにIRRを政策的に保証している再生可能エネルギーの評価が問題となる。さらに、CO2対策や技術開発などの費用も上乗せする必要がある。
CO2対策費用をより重要視するべきだという見方もあり、OECDでの発電コスト検証では電力会社の費用負担(狭義のコスト)にCO2対策費を加えているが、他の社会的費用については別途評価対象とするという。その理由は明確にはされておらず、あまり納得できない話だ。
原子力については、前回の議論で事故時の損害費用を5.6兆円としたが、これは現在の視点からは過小評価となるだろう。福島の現状回復に数十年が必要なので、失われた経済損失と賠償でその程度の金額とは考えられない。シビアアクシデントの損害費用は原発だけに限定された項目なので、過小評価は許されない。
再生可能エネルギーは確かに導入コストが嵩む電源であり、送電線の敷設や系統安定化のためのコストも必要だ。ただ、系統線を敷設する必要があるのは別に再エネだけではない点には注目する必要がある。また目標が2030年ということであれば、送電事業は分離されているので、送電網は大規模化しており、系統安定化費用はその分低下することも考えられる。そうした評価をどう扱うか、ということにも注目したい。 |