サウジアラビアのアブドラ国王が亡くなった。イスラム国の人質事件のため、あまり注目されてはいないが、本来ならば原油価格にも大きな影響を与えかねない、大きなニュースだ。事実この報道を受けて、原油価格は一時1$程度急上昇したが、サルマン新国王がヌアイミ石油鉱物資源大臣の留任と、アブドラ前国王の政策を引き継ぐ方針を表明したことで、再び下落した。とりあえずは現状の低い原油価格水準が維持されることになったというのも、あまり注目されなかった理由の一つかもしれない。
それでも、アブドラ国王の死は、エネルギー業界、そしてプラント業界においても大きな事であることは変わりない。石油に限らず、ガスや石油化学、電力関連など、サウジアラビアのインフラ関連プロジェクトには、日本も少なからず参加してきており、我々との関係は決して浅くはない。
ただ、以前からサルマン新国王が政権を運営してきているので、ここでサウジアラビアの政策が大きく変わらないと予想されていた。原油価格をOPECが維持するというこれまでの方針は、今や影を潜めた形となった。今後暫くは、需給が価格決定の主要因として推移しそうだ。
しかし原油価格の下落はサウジアラビアにも、影響が出ている。具体的にはラス・タヌーラ製油所のアップグレーディング計画が1年ほど中断されることになったのだ。サウジアラビアだけではなくカタールでも、Shellが参加するAl-Karaana石化プロジェクトが中止となった。米国ではシェール開発企業に破産申請する会社も出てきているなど、原油価格下落が具体的にプロジェクトに影響を及ぼしてきている。だが、「もともとボラティリティが高い」石油市場はこれまで継続的に投資を続けてきており、あまり悲観する必要は無さそうだ。特に中東ではボトムレスなどの石油高度化や、石化プロジェクトでも、よりダウンストリームやファインな分野へと投資の内容は変化しつつある。
アブドラ国王の死は、そうした構造変化の象徴であるかのようだ。 |