エンジニアリングシンポジウムでも示されていたが、環境問題への対応はエンジニアリング業界の大きな課題の一つだ。いかなるプラントであろうとも、それを建設し運転するということ自体が温暖化ガスを大量に発生させてしまうことに繋がる。従って、プラントのライフサイクル全体で、如何にエネルギーロスを減らせるか、という事に挑戦し続けなければならない。
エンジニアリング産業としては、プロセスの最適化、エネルギーマネジメントの高度化、高効率機器の採用などを、それこそ経済的に見合う限り投入していくということが高効率化、すなわち省エネを達成していくというのが、いわば王道だ。
しかしプラント単体でのエネルギー高効率化には限界があり、全体から見ればさほど効果は大きくはない。それがコンビナート規模で実施されると、かなりのインパクトを持つようになるが、それにはプラントユーザー側の意思決定が必要だ。
経済産業省が国内石化産業の調査報告書をまとめ、スクラップ&ビルドの検討も必要、と再編を促している。老朽化し、規模も小さいエチレンセンターを集約し、新しい規模の大きいプラントとしていくことは、エネルギーロスの削減の面からも重要な意義がある。石油精製と石油化学とのインテグレーションも進んでいない日本の産業構造を変えていく必要は高まってきている。そして、それに対応するだけの知見と経験を、日本のエンジニアリングコントラクターは既に備えてる。
これまで日本の石化産業は、償却の終わった設備を運転すことで利益を出し続けることが可能だった。しかし原料価格が以前のように下がることはなく、中国の石炭ベースの製品や、北米のシェールガスベースの製品のような、コスト競争力の高い製品に周囲を囲まれてしまう状況が現実化しつつある今、プラントの老朽化対策コストで利益が圧迫するより前に、構造改革への具体的な動きが必要となるだろう。そして、それは地球環境にも適合した形となるはずだ。 |