原油価格が80数ドル程度まで下がってきている。国内産業にとってはエネルギーコストが低下するので喜ばしいことだが、円安が定着しているせいか、あまりその恩恵を受けている実感はない。これまで収益面で苦しいものがあったので、原油安の影響が生活まで回ってくるには、まだ時間がかかるだろう。しかも、このまま原油安の傾向が続くとも限らない。米国ではこれから暖房用の石油需要が上がってくる季節だが、一方でシェールオイル生産が順調に伸びているので、米国の原油輸入量はこの数年、一貫して低下している。このあおりを受けて中南米産原油が他地域に向かうなど、世界的にエネルギー資源の流れに変化が生じており、市場を見通すことは難しくなった。
また北米ではコストアップによる採算性の低下で、いくつかのガス関連プロジェクトに遅れが生じている。そこに原油安が来ており、北米のLNG輸出のメリットが出しにくくなってきている。事業採算性に懸念が生じるのもしかたない。
一方で世界的には紛争による政治リスクが高まっている。ウクライナ問題への対露制裁でロシア資源の開発が難しくなりつつある。しかし対露制裁によって欧州向けのガスが減少する訳では無く、開発投資していたエクソンモービルだけが、ババを引いたとも言われている。
さらにイスラム国が石油パイプラインや石油設備を攻撃するような事が有れば、原油価格は高騰してしまう。それでなくとも次期OPEC総会での減産はほぼ決定的なので、この二つが同じ時期であれば、再び100ドルを狙う展開になる可能性もあるなど、とにかくエネルギー市場は先行き不透明感が深まってきている。
そう言えば、ロシアは中国向けのガス輸出を優先するため、日本と合意しているウラジオストックLNGを停止するとか、いや日本にはパイプラインでのガス供給を打診しているとの話もあるが、いずれも確認されてはいないといったように、色々とマユツバな話も出やすくなってきた。 |