建設作業の労働者不足が世界的な問題となっている。日本でも既に公共工事のコスト増加で入札不調が続き、価格を引き上げざるを得なくなっているうえ、2020年東京オリンピックに向けた各種の工事でもコストの上昇が危ぶまれている。国内の建設需要の増加は主に民間建設需要の増加が起因となっているが、産業施設の建設でも同様の事態が起こってきている。
また北米ではシェールガスによるエネルギーおよび石油化学プロジェクトのブームにより、熟練労働者不足とコストの上昇が課題となっている。そしてそれ以前から、オーストラリアでは労働者の賃金の高騰と人員不足が課題となってきた。それが一つの要因となって、オーストラリアの大規模プロジェクトが動かなくなっていった。このためオーストラリアは、外国人労働者の受入れを表明していたが、労働者ユニオンの抵抗でなかなか進んでこなかった。
しかしここにきて、ユニオン側も労働条件を緩和することに前向きになってきているという。さすがにこれほどプロジェクトが動かなければ、受け取れる筈の賃金も受け取れなくなるという危機感もあったのだろう。今後の協議次第では、オーストラリアのプロジェクトも動き出すかも知れない。北米もオーストラリアと同じく、労働者のユニオンの力が強いため、海外のコンストラクターがなかなか入れない市場だ。だが、一部案件では撤退を表明する企業も出てきている。プロジェクトを潰してしまえば元も子もないので、ある程度労働条件が緩和されるかも知れない。
一方、日本の場合は状況が異なり、日本の建設労働者不足は、その立場の弱さにある。つまり北米や豪州とは真逆なのだ。公共部門が年々発注額を切り下げていく傾向の中で下請け企業がコストを押しつけられてきた。また長期に亘る建設不況も伴って、現場の要員を抱える中小企業が立ち行かなくなり、廃業が続いてきた結果だ。そして市況が回復した現在でも、そういう構造は変わっていない。このままで良いとは到底、思えない。 |