iPhoneが支持されているのはデバイスの力という訳ではない。デバイスの性能でいえば、アンドロイド携帯の方がより高く、しかも軽くて薄く大画面化も進んでいるが、それでもiPhoneの牙城を崩すことができない。
このことは製品単体の性能が付加価値である、という思い込みを払拭するに足る。「アップルはiPhoneを単体の製品としてではなく、エクスペリエンス(体験)を提供するためのツールとして位置づけている」という見方が支持を得ている。そしてこの「エクスペリエンス」日本の経済誌では驚くほど目にしないが、今後の経済のキーワードと言われている。実際、ダッソーシステムズも「3Dエクスペリエンス」を打ち出して3年になる。
さて、先日行われたスマートコミュニティ展を「エクスペリエンスを意識しているか」という視点で見てきた。だが結果として、エクスペリエンスを意識しているのは、漸く自動車メーカーにそれらしさを感じるに留まっていた。運転中に必要な情報を車が提供してくれるシステムが高度化しており、明確にその体験をイメージできるのだが、電機メーカーはほぼ技術紹介、スマートコミュニティ構想の紹介に留まっていた。
GEはさすがに多少は意識していたらしく「インダストリアルネットワーク」と称して、なかなかのプレゼンを行っていた。展示していたのはコンポーネントだけだが。
既に日本各地でスマートコミュニティの実証的な取り組みが行われてきており、それなりに成果も出てきている。しかしそれらの説明は極めて技術的であり、プロジェクトのコンセプトとその成果の紹介だけで、そこに住んでスマートコミュニティを体験した人々のエクスペリエンスが、見る方の感性に伝わってこないのだ。
「これは楽しそうだ」「こういう生活がしてみたい」と人々に思わせられなければ、スマート化が拡充することはない。エネルギー業界もエクスペリエンスをもっと研究してみてはどうか。 |