プラント業界で再び、世界的な再編が進みつつある。仏アルストムのエネルギー部門を米GEに売却する動きが出たところで、シーメンスがこれに対抗して買収に名乗りを上げた。東芝はGEがアルストムを買収した際には、GEから送配電部門の買収を提案する方針という。その一方で、三菱重工業はシーメンスと製鉄機械で合弁会社の設立を発表する。さらにシーメンスが英ロールスロイスのエネルギー部門の買収に合意した。
こうした業界再編には、マーケットの変化が大きく関わる。例えばGEのアルストム買収は、世界的にエネルギー部門の変質が背景にあるように見える。米国も欧州も、再生可能エネルギーの拡大と原子力の停滞、米国では石炭からガスへの転換、欧州での石炭火力の見直しなど、発電設備の構成は多様化しつつあり、機種としても地域的にもポートフォリオの拡大は重要な戦略だ。
製鉄機械では、世界的な生産過剰状態が続く中で、メーカー同士の競合の激化が予想されており、上流から下流までを一貫して提供できるプラントメーカーとして、全世界を対象として領域を拡大することで、規模のメリットとシナジー効果により競争力を強化するという判断だろう。最近の再編も、市場が大きく変化していることに対応した動きが続いているということだ。
ただ日本では事業統合はそれだけで高評価を得られるが、事業買収や合弁による事業の規模拡大が、必ずしも企業価値の向上を意味する訳ではない。
例えば製鉄機械は、個別の機械単位での案件が殆どであるため、メニューを拡充することが事業強化となる訳ではない。かつて日本の製鉄機械が大幅な再編を行ったが、世界の製鉄機械市場で事業を拡大できたかというと、市場の制約もあったとはいえ、限定的であったと言わざるを得ない。今回の一連の動きの中でも、東芝のGEに対する送変電の買収提案には、GE側のメリットが見えてこない。
業界の再編では、事業規模の拡大よりも、企業価値の向上が出来るかどうかが問われる。 |