インフラシステム輸出で問題となるのは、そもそも、その提案が相手国のニーズに合ったものであるかどうか、と言う事だ。ベトナムの高速鉄道計画では、日本の新幹線は明らかに過剰品質だったため、頓挫したのだ。水インフラについては、大規模システムでのコンセッション契約の成功例はある。だが、アジアではむしろ、比較的小さい規模の水道事業が多く存在しており、こうした案件での取り組みはあまり活発ではない。プラントシステムとしては規模が小さく、資金を投入しても回収できない可能性もあるためだ。日本の水システムは基本的に大規模化しており、うまくソリューションとして提供できないという側面もあるだろう。
むしろ、そうした中小規模のインフラこそ、新興国のインフラには適合しやすく、大いに貢献できる分野であるが、日本は鉄道にしろ発電にしろ水にしろ、保有技術の規模が大きいのである。このままではインフラシステム輸出の拡大は大規模システムに特化していく方向にあるように思う。それはシステム価格も高く、償却も長い。事業として規模が大きい分、利用料金も高くなってしまうため、ごく限られた案件しか実現しない。
日本の都市インフラを新興国、途上国にソリューションとして提供していく、というのは確かに魅力的な案である。日本が長年苦しんできた公害と言う問題を、新興国が旨く避けて発展していければ、これほど意義のある話はない。が、日本がやってきたことをそのまま移設することは、コストの面から見て、あまり現実的では無さそうだ。
今後、インフラシステム輸出を拡大させていくには、日本のシステムの横展開ではなく、新技術の創出も含めたソリューションの提案力だろう。現地に適合してこそ、インフラは機能し、持続的にサービスを提供できる。 そうした日本型インフラシステムの価値を向上して、求められるモノとサービスを提供していくために、業界や省庁の壁を取り払って、知恵を集約する必要がある。 |