「シェールガス革命」と言われ数年が経過した。日本では、原油価格連動と円安によって高値のLNGを買わされているが、ヘンリーハブリンクのLNGを調達することで、日本のLNG調達価格が安くなる、という期待がもたれていた。しかし、シェールガスが如何に大量に地下にあったとしても、それを採掘し、液化し、日本までの長距離をLNGタンカーで輸送するには、それなりのコストがかかるうえ、価格形成に影響を与えるような十分な量を確保できる見通しはない。
北米のシェールLPG輸入でサウジアラビアの通告価格(CP)による、固定的な取引に風穴を開けようと目論んでいたLPG業界も、米国の寒波によるガス価格の上昇で、逆に北米LPG価格がCP価格を上回る価格となってしまった。
ではシェールガスは一体何を革命したのか。米国にとっては基礎産業が復権を果たしたことがシェールガスの最も重要な革命であった。そして日本のEPCコントラクターにとっては、これまで市場ではなかった北米地域で、プラント建設プロジェクトに参入できたことが革命的である。
一方、日本のガス業界にとっては、原油価格リンク以外の価格決定方式を手に入れたこと自体に意義がある。複数の価格決定方式を持つことは、価格交渉力の強化につながる。今後のロシアからのガス輸入拡大でも交渉の余地が大きくなることが期待されるところだ。
だが、消費者がガス価格で恩恵を受けるには、調達の多様化だけではダメだ。課題は日本国内にもある。日本では現在、ガスの取引が自由には出来ないが、国内のガス市場が開かれ、設備へのオープンアクセスが保証され、LNGハブ市場が出来て初めて、ガス価格の低廉化が実現する。価格形成メカニズムの多層化と国内市場の自由化を同時に進めなければならない。それには政府主導ではなく、ガス業界が主導的にハブを構築し、オープンアクセスを受け入れてこそ、本来の自由化であり、それでこそ「革命」が成立する。 |