2015年にも燃料電池自動車が商用化されると言われている。その環境を整備すべく経済産業省は全国に100カ所の水素ステーションの整備を目指しており、4月からその公募が開始されるという。コストは1ステーション当たり2億円。全体で約200億円の投資により、水素ステーションの整備を進めるきっかけとする考えだ。
また経済産業省では、水素・燃料電池戦略協議会を開催、今年に入ってワーキンググループも行われている。傍聴ができないので、どのような議論となっているかは、経済産業省のHPで議事録を見るしかないのだが、配布資料を見るに、検討の基本的視点のトップに「水素エネルギーのコストも踏まえたエネルギー政策上の意義を可能な限り定量的に把握する」というのが掲げられていて、少々ズッコケてしまった。「既に水素ステーションの整備を進めようという時期に至っているのに、何を今さら…」という感じである。
もちろん、新技術の登場や機器の改良に伴い、水素システムのコストは評価が変わってきた、ということはある。それを反映させつつ、さらにコストダウンの可能性を見据え、日本にとって意義あるエネルギーシステムとしたいというのは解かる。だが、それならば、これまでの水素システムの政策上の意義は何で、どういう理由で推進が決まってきたのか、良くわからなくなってくる。
頭を整理してみると、まずは燃料電池の実用化、それに続く燃料電池自動車の開発、さらに家庭用燃料電池コージェネの普及などから、水素社会への期待が膨らんだが、この時点では非現実感がどこかにあったのは確かであり、コスト削減策も量産効果しかなかった。それが最近ではコスト低減化につながる技術開発が進んできたため、水素エネルギー政策が息を吹き返した、と見ている。つまり多少、非現実的でもエネルギー政策は政策として成立してしまうのだ。原子力でも再エネでも同様である。どれかがヒットすればそれで良いのかも知れない。 |