○…法隆寺(西院伽藍)は世界最古の現存木造建築であるが、建設年代については、見解の相違が明治以来ある。日本書紀に670年に法隆寺が全焼との記事がある。現在の法隆寺は8世紀に再建されたという再建説と、焼けたのは別の寺で現在の西院金堂は聖徳太子薨去後の620年代に立てられたという非再建説である。今は前者が学界などでは優勢だが、両者の論拠、さらに最新の年輪年代の成果をみると、非再建説が正しい。
建築史からみて西院伽藍が7世紀前半の飛鳥様式なのは間違いない。その金堂には本尊の釈迦三尊など飛鳥金銅仏があり、移動は考えられない。一方、若草伽藍跡と呼ばれる地区の発掘により670年の焼失が事実ということが判明している。
日本書紀には法隆寺とは別に聖徳太子家の私寺として斑鳩寺がある。本尊の釈迦像の光背銘は聖徳太子薨去直後の造像を述べており、この像を本尊として金堂が作られたと見られる。年輪年代学の成果は西院伽藍の使用材が6世紀末以降7世紀代の年代を示し、7世紀飛鳥時代の西院伽藍の存在を示している。
金堂にはもう一つの本尊薬師仏があり、その光背銘は用明帝の勅願寺としている。薬師仏は飛鳥仏ではなく、後代のものだ。用明帝の勅願寺として法隆寺(若草伽藍)が立てられ、焼失後、法統を斑鳩寺が継ぎ、焼失した薬師仏を再造して安置したと見られる。
○…先日まで、大いに世情をにぎわしていた問題がある。食べ物に関わる表示の偽装だ。有名ホテル・レストラン・高級旅館など、出て来るは、出て来るは、食材偽装が次々と明らかになった。ホテル側は「誤表示」と言い訳したが、結果的には偽装だろう。かつて餃子を代表とする中国製食品の危険性が言われたが、国内産表示でも安心していられない。
発覚した例をいくつかあげてみよう。高級旅館による牛脂注入の“霜降り肉”、会席料理の「和牛ステーキ」も、結構な値段を取りながらインチキだった。和牛でなくても、せめて国産牛(国内で一定期間飼育)と思いきや、これが格安の豪州産冷凍物だった。有名ホテルでは 「フランス産フォアグラ」は別の産地で、「和牛」は豪州産牛肉と悪質。さらに「サーモン」(サケ)と表示しながら、海水中で養殖された「トラウト」(マス)を提供していたことを謝罪した。そのほか、人工フカヒレも典型的なフェイク食材。それを使うかどうかはホテルの格に関係なさそうだ。酒飲みにショックだったのは「純米酒」偽装だ。
こうなると、あらゆる食材を疑りたくなる。提供する方は競争の激化で、何でも有りになる。「黒毛和牛」のハンバーグが、この値段ならお得とか、「手造りハム」がこの値段ならとか。更には、安ければ安い方が良い、という消費者の誤った判断も大きく作用しているかも知れない。 |