○…トヨタが4月から新体制を発足させ、自動車事業を再編した。注目されるのは「国内で年間300万台の生産を続ける」と改めて宣言したことだ。300万台維持によって、豊田市を初めとして、ひいては日本中のトヨタや関連部品会社の労働力を維持する。豊田市をデトロイドのような廃墟にしない。その意気やよし。
当然のことながら、これは輸出を前提とした数字で、米国工場と同じ競争力を維持することが必要で、そのためにさらなる原価低減を進めるという。14年3月期の利益増の原動力は原価改善だ。
新興国向けではトヨタはドイツVolksWagenに出遅れている。4月の新体制で新興国向けを第2トヨタとして、自前主義を捨て、ダイハツに協力を求めたという。6月にトヨタは部品会社に小型車の開発と発注を「トヨタ」仕様ではなく、「汎用仕様」に変えると宣言したという。トヨタ仕様は高品質を保証するもののコスト高の原因でもある。VWがモジュール化標準化を進めていることを見習ったものでもある。
300万台体制を守るため、トヨタ方式を捨てても、原価低減を図るということだが、汎用方式適用はトヨタにとっても、関連会社にとっても対応するのは容易なことではない。
グローバル企業が母国や郷土にこだわること自体に無理があるのではないか。
○…先月7月半ば過ぎ、米国デトロイト市が「財政破綻を声明し、ミシガン州の連邦地方裁判所に連邦倒産法第9章適用を申請した」と報じられた。このニュースを聞いて、「ああ遂に…」と思った。
私の数少ない海外渡航経験では、いずれの地も強い印象が残っている。その中でも、今から約25年前に行ったことのあるデトロイトは特に強烈な印象を持った。当時、人口100万人を超える自動車の街デトロイトは、F1レースも開催される国際都市だった。しかし、高層ホテルに宿泊した私たち団体は、「決して、ホテルおよび付随するモール以外には出ないように」釘をさされた。事実、バスで自動車工場を見学する私たちの目にしたのは、ダウンタウンの廃墟だった。夜、羽を伸ばすべく仲間が向かったのは、エリー湖対岸のカナダの街ウインザーである。「T型フォード」を生み出した最先端の街の姿からはほど遠かった。
その後、GM、クライスラーが破綻し、デトロイトの街はスラム化に拍車をかけ、街全体がゴーストタウン化する。そして、犯罪都市デトロイトの汚名がますます轟く。
25年前のデトロイトで現在の姿は予測できなかったが、その萌芽を感じたような気がする。街の財政が破たんしても日本の場合、泥棒と強盗とゴミがただちにあふれ出すことはないだろうが、将来は分からない。 |