○…産業学会の大会に出席した。テーマこそ「エネルギー政策と日本の産業競争力」であったが、現下の中核課題である電力産業の改革に取組んだのが学会外の専門家と若手研究者による2本あわせて2時間あまり、しかも司会を受け持った学会幹部研究者が自らコメントができない、発表者間の討議にゆだねると告白する体たらく。日本経済の命運を握るエネルギー産業の研究者がほとんど居ない、研究者が自動車産業など成長産業に偏った現状がうかがえた。
この専門家の報告は時間に迫られ、内容が短縮され、十分な理解ができなかったが、氏は政府の政策にも関与し、2011年以降報告内容と似た内容の書籍を出版しているので、それらで補足するしかなさそうだ。
報告の中で、廃炉ビジネスに注目していたことがある。安全規制の強化に伴い、廃炉が増加する。日本のコストは廃炉が進んでいる米国に比べた高い。これはこうしたノウハウをもった海外企業を参入させればコストが下がるということであった。
確かに世界的に廃炉ビジネスが、今後とも成長するのは間違いない。世界のエンジニアリング産業・建設産業・ユーティリティサービス産業の成長分野だ。問題はクローズドな日本の電力市場が国内外にオープンにならなければ、こうした国際コストの恩恵は得られないということだ。
○…日本の人口減少を「人口崩壊」という言葉でマスメディアがその異様さを報じている。この半世紀という比較的短い期間に日本の人口が三分の一も失われる事態だという。これまでも人口崩壊の先例がなかったわけではないらしい。ヨーロッパの人口の三分の一が失われた14世紀のペスト大流行などがそれ。異常な事態が引き金となって起きたわけで、日本のように特別な異常要因がなく人口が減少し続けるというのは過去に例がないということらしい。
このまま日本社会が有効な人口減少対策を講じず、勢のまま減少していく傾向を放置すれば人口崩壊は起きるという。今の日本が人口減少傾向に陥っている最大の要因は、若者が子どもを産まなくなったこと。子どもが生まれなければ人口が減少するのは自然の勢いだ。つまり今の日本の若者には、低賃金にあえいで、結婚生活のための基盤を作れないものが増える一方で、折角結婚して子供を産んでも、育てられる自信がない。社会が子育てを支援してくれないからだ。
グローバル企業を目指している某企業の社長が新聞インタビューで「年収100万円も仕方がない。中間層がなくなるかもしれない」と話した。世界的な観点では当然のことというのだろうか。しかし、日本では年収100万円では子供を産めない。その企業は日本で存在価値はあるのか? |