○…「春は名のみの・・」早春賦、今の季節にぴったりの名曲であり、歌詞だ。ただこの曲、日本オリジナルではないようだ。音楽家の青島広志氏が、モーツァルトの「春への憧れ」が原曲と明言していた。このことは音楽業界で昔から知られていたことだそうで、この作曲者の息子2人が著名な童謡・唱歌作曲家で、この人達が亡くなった現在では解禁に問題なしと青島氏は判断している。「春への憧れ」という曲も日本でよく知られており、インターネットでも両者が似ていることはよく話題となっている。実際に聞いてみても、青島氏の「春への憧れ」が原曲は、納得できる。
唱歌の歴史をみると、1900年代までの「蛍の光」など西洋音楽の翻訳が中心の翻訳唱歌の時代から、1910年以降のオリジナル曲中心の文部省唱歌の時代に替わる。「早春賦」は文部省唱歌の代表的作詞家の詞に新進作曲家が曲をつけた新作唱歌の一つとして発表されたもの。一時代前なら、原曲モーツァルトの翻訳唱歌となっただろう。
実は「早春賦」のメロディーで、全く違う曲がある。森繁久弥が作り歌う、多くの人の知る「知床旅情」だ。但し、夏の知床の歌だ。「知床旅情」には元歌がある。それは「オホーツクの舟歌」、凍てつくオホーツクで春を待つ歌詞だ。日本一遅い春を迎える最果ての地の「早春賦」なのだろう。
○…デフレ脱却が日本経済の喫緊の課題になっているようだ。内需拡大のためには消費者の所得を増やさなければならない。先ごろ安倍首相は経済団体の代表者達に異例の「賃上げ要請」を行った。まるで連合のような労働団体の役割りを担ったようなものだ。翻ってみれば、それは労働団体・労働組合のどうしようもない退潮を物語ってているのかも知れない。
「賃上げ要請」に応えて早速名乗りを上げた企業が現れた。ある大手コンビニが従業員の賃上げを発表したのだ。景気回復のためには評価できる取り組みだと思う。しかし、伝えれるところによると「賃上げの対象として考えているのは、20万人近くいる従業員のうち正規社員3300人だけで、残りの非正規雇用の賃上げは考えていない」なのだという。確かに、何もしないよりはいいのだろう。けれど、本当にデフレ脱却を考えるのなら、非正規雇用の従業員を外すことは理屈に合わない。
現在、日本企業の非正規雇用の比率は35%以上に達しているらしい。この人たちの賃金が低く抑えられている間は、とても消費の伸びも期待できない。したがって、本当に有効なデフレ対策を取ろうとするのなら、非正規雇用者の賃金底上げを図る事が重要であるはずだ。今回の発表が単なるパフォーマンスに終わらないことを願う。 |