○…猛暑は続いているが、昼間はツクツクホウシが、夜は秋の虫が鳴くようになった。秋近しである。イソップ寓話のアリとキリギリスは働き者と怠け者の例えとして、最近は工業輸出国と消費輸入国の例えとしても使われている。イソップの原話ではキリギリスでなく、セミだそうでセミのいない中欧以北でキリギリスに変身したものが日本に入ったそうだ。どちらも日本ではよく鳴くのでどちらでも可なのだが。
しかしこの例え、人間の勝手で、昆虫の実態は全く異なるようだ。アリは実は「7割は休んでいて、1割は一生働かない」のだそうだ。社会的動物であるアリの社会の労働の調整には個々のアリの労働に対する感度(閾値)によっており、働かないアリがいないとアリ社会(巣)は崩壊してしまうそうだ。
キリギリス・セミは繁殖のため鳴いているので種の保存にために必須の行動、冬を成虫として越すことはないので、怠け者呼ばわりされる理由はない。
セミは羽化して1週間の命、はかないものと捉えられるこが多い。しかしこれも見当ちがいだ。セミは羽化してからも1週間でなく1ヶ月近い寿命はあるようだ。セミは卵を木に生みつけ、孵化して土にもぐり数年、地上にでて羽化して交尾、卵を生むというライフサイクルで、ミンミンゼミで7年ほどと昆虫としてはかなりの長命だ。
○…若い友人と携帯メールなどをやりとりするとき、気になったことが数回ある。通常は「こんにちは」という挨拶ではじまるが、そこに「こんにちわ」と書く人がいたのだ。「こんにちわ」はないだろうと、当初は思っていた。しかし、聞いてみると若い人の間では「こんにちわ」も違和感なく使われているらしい。
いうまでもなく「今日はお元気ですか」とか、「今日はお日柄もよく」などが省略されて「今日は」になっている。「こんばんは」も同じだ。「こんにちわ」は誤表記であろう。ところが、インターネットで検索してみると「こんにちわ」が氾濫しているのである。
当然のことながら、こういう誤表記は許せないと主張する人もいる。お遊びだとは思うが、「『こんにちわ』撲滅委員会」なるサイトも存在する。一方「今のところ、『こんにちは』が正しいとされると思うが、将来『こんにちわ』を使う人が多数になれば、その時『こんにちは』が正しいと言ってみたところで虚しいだけ」という人もいる。
考えてみれば、我々も江戸時代の言葉をそのまま使っているわけではない。時代と共に言葉遣いは変遷する。かといって日本語の乱れを受け入れているわけではないし、若者に迎合している訳ではないが、最近、「こんにちわ!」に違和感をあまり感じなくなってしまった。自分は進歩したのだろうか、あきらめたのか? |