○…飛鳥の木簡−古代史の新たな解明という本を読んだ。木簡というのは文字の書かれた木片で、紙以前や紙代用に使われる書写材料で荷札や名札も含まれるが、古代史では発掘されたものが主で日本や朝鮮半島で続々と発見されており、考古学による新たな史料として注目されている。
本書は奈良県飛鳥地区から発見された飛鳥時代の木簡史料により、古代日本の国づくりを考えようというもの。平城京以前の飛鳥に都をおいた時代を飛鳥時代と読んでおり、この書が対象とするのは大化改新以降(いわば飛鳥時代後期=美術史でいう白鳳時代)、律令国家の形成期にあたる。
最近までの古代史学界は大化改新は日本書紀の作文で、実は乙巳の変というクーデターに過ぎないという学説が支配しているが、本書の著者はこの学説で育ちながら、木簡史料から大化改新は肯定できる可能性を述べている。大化改新645年から20年程度あとの木簡やその他からみて日本書紀の述べる大化改新の詔の革新部分が、650年代後半あたりには実行されていたと見ている。
大化改新は日本書紀という編纂資料の作文ではなく、同時代史料である木簡史料によっても、日本の歴史にとって画期であることがあらためて証明されつつある。明治の人々が明治維新を大化改新に準えたのは理にかなったことというべきだろう。
○…「旧盆」の真っ最中である。子供のころ夏休みで田舎に行ったとき、特に印象深かったのは迎え火、送り火などお盆の行事であった。夕刻に玄関の前で小さく切った角材を組み、それに火を点ける。意味は分からなかったが厳粛な気持ちで燃えるのをみつめていた記憶がある。
それにも増して、毎年夏休みに行った田舎で記憶に残るのが、山、川、田んぼ・畑を駆けずり回ったことである。朝はセミの大合唱で目をさまし、日中は近所の悪童と田園を駆け巡る。夕方になるとセミの声で淋しくなる。子供のころはそんな夏休みを過ごした。
今でもセミの大合唱は続いているのだろうか。帰省しなくなってから久しいのでわからない。このごろは、帰省ラッシュという言葉を聞かなくなっている。夏休みも子供たちは塾通いに明け暮れているのだろうか。
かつての日本の原風景を味わうのに最適な映画があると友人に聞いた。日本映画ではない。台湾映画で「冬冬(トントン)の夏休み」という題名だ。監督は海外でも評価の高い侯孝賢(ホウ・シャオシェン)。小学生トントンのひと夏の体験だ。仰げば尊し、赤とんぼも出てくるらしい。早速、レンタルショップを探したがこれがどこにもない。確かにDVD化されてはいる。残り少ない8月中には鑑賞したいと思っているが、果たしてどうなるか。 |