○…日本の電機産業の敗北、特にその代表としてつい最近まで価格はともかく高品質を誇った日本のテレビの敗北が明確となった。失敗の転換時点は種々あるが、2000年代初頭が重要な時点だ。日経の「テレビはなぜ負けたか4」が当時の日韓企業の状況を伝え、日本の敗北の原点の一つを示している。
この記事の内容を示すと、2002年シャープはパネルからテレビまでの一貫生産の亀山工場の建設を開始する。最先端技術をブラックボックスにして、韓台勢の追随を阻む戦略だった。しかしサムスンが恐れいたのはシャープが海外に液晶テレビの海外生産に乗り出すことだった。シャープだけでなく、日本を代表する製造業が国内で大型投資に踏み切った。藤本隆宏の「摺合せ型ものづくり論」が脚光を浴びた。日本のものづくりは強いというナショナリズムが蔓延していた。グローバル化の中で、内にこもる日本のテレビの未来は衰退であった。
日本の生産現場、エンジニアの能力が自負するように極めて優秀だとしても、ものづくりは最終的にはコストが決め手だ。ものづくり日本という神話が2000年代の企業戦略そして産業政策を誤らせたのは間違いない。アップルのような先進国ビジネスモデルを日本の電機産業は依然として確立できていない。製造業全般に言えることであり、エンジニアリング産業にも通ずる。
○…大手の新聞、テレビなどはほとんど報じないが、今後の政治の行方をも左右する大きなうねりの萌芽が起きているような気がしてならない。
たまたまインターネットで知りえたことだが、大飯原発の再稼働に対する反対運動のことである。6月初め首相官邸前の道路を、呼びかけで集まった数十名が再稼働反対の行進(歩行?)を行ったらしいが、1週間おきに行われるにつれ、飛躍的に人数が増えているようだ。当初は30人、次に2000人、次の週の6月22日には何と4万5千人になったらしい。この分で行くと1週間ごとにどれくらい増えていくのか全く予測がつかない。これらの人々は、組織的に集まったわけではないらしい。ツイッター・フェイスブックやインターネットなどの呼びかけで集まったとのことだ。
その反対運動の是非はさておく。注目すべきはこれら携帯電話やパソコンを利用した情報の伝播力とその影響力の大きさだ。驚くべきスピードで情報が拡散する。その典型的な例がチュニジアで起きたいわゆる「ジャスミン革命」だ。その余波は中東全体に伝播し、いまもその影響は及んでいる。そして、中国でも若者を中心にこれら情報機器を利用したニュースが飛び交っているらしい。日本でも為政者はその影響力を無視できなくなってきた。 |