○…「イラクに円借款1600億円、製油所を建設」、本日の経済紙の一面の見出しだ。内容はイラクの南部バスラ製油所プロジェクトに供与するもので、イラク案件過去最大、かつイラク向け初めての日本企業へのひも付き円借款。バスラ製油所内に新規石油精製プラントを建設するもので、2013年に本体工事実施企業の入札実施、14年に、決定・着工、18年運転開始という。
なんとも違和感がぬぐえない。円借款が製油所のような商業ベースで可能なものに供与されるケースは通常考えられない。イラクは安全確保などのコストがかさむので民間の投融資ベースでは難しいとしてOECDの了解を得たという。イラクでは現在石油開発を初めとして多くの民間プロジェクトが動きはじめている。民間ベースでできないというのは納得しがたい。
さらに問題は日本企業へのひも付きが中東ベースで高いコストになる可能性があることだ。中東の石油精製プラントにおいては圧倒的に韓国コントラクターのコスト競争力が高い。イラクが感謝できるリーズナブルなコストにするには、韓国コントラクターの参加なしには考えられない。
高度なプロジェクト、また機器段階では日本企業に競争力がある。こう考えれば、ノンタイド案件の方が、イラク・日本とも満足する結果が得られるのではないか。
○…「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」はダグラス・マッカーサーが退任する際、米議会の演説で発した言葉だそうである。ただし、この有名な言葉は、もともと「…おれたちゃ少しずつ消えていくんだ。老兵は死なず、ただ消え去るのみ。二等兵様は毎日ビールが飲める…、…俺たちはいつも訓練…」と続く兵士達の間で歌われた風刺歌のフレーズらしい。
実は私は長い間この演説を「老兵は黙して語らず、ただ消え去るのみ」だと勝手に思い込んでいた。マッカーサーが一切弁明しないと言ったのだと思っていた。
最近、約20年間就いているある地域の役職をこの3月で退任したいと考えている。その旨をつげた組織の仲間から引き止められたが、その際「老兵は黙して…」と恰好をつけて答えたのだ。とんだ恥をさらした。
だが、私の立場から言うと「老兵は黙して…」の方がその場に相応しい言葉と考える。会社と違ってその組織はいわばボランティア組織。目的は、地域との融合である。長い間同じ役職についていると多くのことを経験し、若い人の経験不足が目につく。つい、口出しをしてしまう。確かに、助言が役立つこともあろうが、余計なことだ。
考えてみれば、経験不足大いに結構。新しい発想も生まれる。やはり、老兵は黙して語らず、ただ消え去るべきなのだ。 |