○…2112年の干支は壬辰(みずのえたつ)である。十干では「壬」は新しい命が育つさま、十二支の「辰」は形が整う・伸びるさまなどを表しているそうだ。このことから、今年は経済的にも実り多い年になるであろうという占いが多く見受けられる。
もしこれが当っているのなら喜ばしい限りだ。だが、ユーロ圏が破綻の連鎖を止められるか、これまで経済成長を牽引してきた中国、インド、ブラジルなどの成長速度が減速しないか等々世界経済が順調に進むには多くの課題が控えている。
さらに今年は、世界の主要国で指導者が交代するかも知れない年である。アメリカ、フランス、ロシア、韓国は大統領選挙がある。そして中国は国家主席が代わる予定だ。そして日本でも総選挙があるかも知れないと、マスコミが囃している。まあ最近は、マスコミが一斉に囃し立てることに殆ど信をおけないことが明らかになってはきているが…。
世界は、経済的にも政治的にも今年は大きな変換点に立っているのかも知れない。その中で日本は昨年、過去例を見ない苛酷な体験をしてきた。さらにその影響は今後も続くだろうことは予測に難くない。
しかし、干支では今年は実り多い年になると予想されている。こちらの予想が実現して欲しいものだ。
○…「稲作以前」という40年以上前に発刊された本が改訂新版として再刊された。民俗学者佐々木高明の著、考古学の常識であった縄文時代が採集狩猟の時代という通説に反して、焼畑農耕が存在するという仮説を提唱したものだ。もっとも一部在野の考古学者が農耕の存在を指摘していたことはあったが異端とされていた。この著は、京都学派の照葉樹林文化論を基盤としてナラ林文化論を提唱するなど学際的な研究成果で、稲作以前の農耕文化の存在の可能性を世の中に広く知らしめたものであった。
若干の補訂を加えて、再刊されたのだが、その最後に最新のDNA分析などによる稲作等農耕起源論で知られる佐藤洋一郎が40年間の発見・学説を踏まえながら解説を書いている。縄文時代に農耕の要素があったのは、考古学的発見も相次ぎ、常識化したという。佐々木や佐藤のいうことに間違いはない。しかし主流の考古学者は水稲以前の農耕を農耕と認めず、「園耕」(ガーデニング)として別の概念とする学者まである。
稲作の起源ということでは、稲が長江流域ということが、考古学的証拠(遺跡)やDNA分析などから、極めて確度の高い仮説となったことだ。この書でも引用されている「照葉樹林文化とは何か」(佐々木著、佐藤も参画)が佐々木の最近の到達点で、この著とあわせて読むと参考になる。 |