○…原子力発電コストが実は相当に高く、事故処理コストも含めれば巨大なものとなることはこの欄でも既述した。福島事故は原発のリスクが地元だけで負担できるものでないこと、被害額は社会全体として膨大なものとなること、原発を運営する電力会社の操業能力・経営体質が原発運営にふさわしくないことなどが明らかになった。従来の原発ありきの電力体制は崩壊せざるを得ない。原発体制は経済・社会にしっかり組み込まれており、単に原発を止めればすむものではない。例えば原発代替エネルギーにしても単純な問題ではない。
自然エネルギーが原子力を代替することは非現実的だ。ことに日本では量的に期待できるものはほぼ皆無だ。薄くて不安定なのが、自然エネルギーの本質。また水力を考えれば一目瞭然だが、大型自然エネルギー利用は自然を破壊する。
原子力代替には、原子力同様、現在の地球の太陽エネルギー循環外からエネルギーを得る、炭化水素利用しかありえない。大量に石油を買い増すのは不可能である。天然ガス火力・石炭火力が解決策だ。天然ガスは日本ではLNGとなるが、量的にはともかく、コスト的に高く、原発同様のベースロード電源とはなりにくい。ベースロードは石炭火力の役目だ。高効率化・排出量削減を実現する超臨界圧など環境技術もある。
○…Macユーザーではないのだが、スティーブ・ジョブズの偉大さぐらいは理解できる。パソコンを作り上げた一人であり、その功績は大きいと言わざるを得ない。そして彼のAppleが生み出した製品はどれもこれも魅力的なデザインを有している。とにかく一度は触ってみたくなるようなデザイン。それがApple製品の魅力である。
スティーブ・ジョブズがそのデザインについて語った言葉が興味深い。「デザインというのは奇妙な言葉で、どう見えるかということだと考える人がいる。しかし、もっと深く考えると、実際にはどう機能するかだ。マックのデザインはどう見えるかではなかった。それも一部ではあったが、そもそも、どう動くかだった。何かを本当にうまくデザインするには、理解する必要がある。すべてに共感する必要がある。何かを徹底的に理解し、素早く飲み込むのではなく噛み砕く情熱に満ちた取り組みが必要だ」。既にコンピュータという世界を超え、ものづくり全体、さらには牽強付会気味ではあるが、プラントエンジニアリングにも通じる何かを含んでいるように思う。
ところが今回のiPhone4sはこの言葉を裏切っている。中味の機能は大きく変わっているのにデザインは変わっていない。「4S」とは「For Steave」の意味だ、という話をうっかり信じたくなってしまう。 |