○…JICAがODAを活用したインフラ輸出を促進するため、東南アジアでPPPのモデルとする9つの重点事業を選定した。このインフラ輸出は政府の「成長戦略」の一つの柱である。PPPによるインフラ輸出では2020年までに19兆7千億円の市場規模を目指すという。今回選定された9事業の成否は目標達成の行方を占う一つの試金石となろう。
今回対象となっている事業には、空港建設、水道事業、廃棄物処理施設、高速道路などが入っている。これまでも日本企業はこれら分野で海外展開を進めてきている。しかし、それらの多くは建設事業、施設整備のみを手がけてきた。それでも多くのプロジェクトで高い授業料を払わされてきた。国内の案件が少なくなったからといって無闇に海外へ、というわけには行かないことを思い知らされた。しかも、このインフラ輸出で目指すのはプロジェクトの管理運営までを含む。現地政府の要請もあるODA事業であるからこの9事業は心配がないかもしれない。問題は、その後本当にそれほどの市場規模を獲得できるかだ。
経験のあるサービスプロバイダーが不在の中、まず国内で実績を積む必要があるのでは…。それに、海外展開の前に、まず国内公共事業をどうにかして欲しい。
○…尖閣沖衝突事件の日本政府の対応はなんとも無様なものとなった。17日間は長すぎる。中国政府に恫喝された結果の処置。政治に関わるべきでない検察、かつ那覇という末端機関が政治的判断という建前。政治主導といいながら、卑劣にも政治的責任を負わない首相以下の大臣。
尖閣諸島に領土問題はないという日本の主張を建前として述べることが正しくとも、現実の尖閣諸島には自分の領土と主張する中国漁船が出没している。ここで起きること全てが外交問題なのだ。海上保安庁を統括する国土交通相・外相・官房長官・首相が、司法のルート(検察)に乗る前に、速やかに判断すべき問題だろう。この海域で巡視船と中国漁船と紛争が多発していたのだから、今回のような事件にどう対処するのか、政府は事前検討がなかったのだろうか。原理に頑固で柔軟性の欠落した閣僚(前国交相・元外相、前外相・幹事長)と政治責任をとらない官房長官・首相が事態を悪化させ、解決の目処さえ付けることができていない。
しかし、中国の対応は極めて稚拙なものだ。日本を屈服させたとしても、周辺諸国に中国の覇権主義への警戒を高め、外交的に得るものはない。今回の対応が、日本の反中感情を高め、産業界が対中依存度を低めるモメントになるのは間違いない。
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