○…「学びて思わざれば罔し、思ひて学ばざれば殆し」−論語の一節である。学問や芸術における学習と独創性の問題のように見えるが、本来の意味は異なる。孔子は仁道政治を実践しようとしたが、機会に恵まれず、弟子育成に努めた。従って孔子の語録=論語は士大夫(為政者)の政治の心構えに関わるものだ。
最近の政権首脳の言動は、上記一節の後半「思ひて学ばざれば殆し」そのままだ。秀れた政治目標があっても、学んでいなければ、国を危うくする。
その例として第一に挙げられるのは、普天間問題だ。沖縄の負担を軽減する、普天間の危険を解消する。その目的やよし。しかしこれまでの日米間交渉の経緯に無知、安全保障を研究した形跡はない。ゼロからのスタート、首相自身、米海兵隊の抑止力を最近になって学んだという。日本、さらには東アジアの安全保障を危うくしている。
もう一つは経済政策。政権幹部の経済オンチぶりは救いようがない。財務大臣がいま勉強しているのは、サミュエルソン−60年代に大きな影響を与えたが、70年代のスタグフレーションに対応できず過去の理論となった。
グローバル経済の中で日本経済の凋落は著しい。日本が現実の変化を受け入れることができていない結果だ。その変化に対応する経済政策を現政権に求めるのは「木に縁りて魚を求むが如き」か。
○…今年の5月連休は、それまで連日寒い日が続いた気候がウソのように晴れわたる日が続いた。連休中、毎日のように晴れわたったというのは50年前以来のことだという。その50年前、5月初旬が連日晴れわたったことを憶えている人はあまりいないだろう。
しかも、当時は文化の日、こどもの日はあったろうが、4日の中日は祝日であろうはずがない。ましてや祝日が日曜日であれば、翌月曜日が休みになることもなく、土曜日も大人は働いていた。従って、大型連休などあるはずもない。家族そろって行楽に行った記憶もない。
当時子供だったからあまり記憶にないが、お盆の帰省ラッシュもなかった筈だ。帰省ラッシュは一家に車が1台という按配になったころから起きた現象であろう。高速道路の発達による車社会が私たちの生活を変えた。
こう考えてくると、気候変動が続いているから迂闊にはいえないが、今後50年間で5月初旬が連日晴れわたる確率は小さいはずだ。その50年後の気候はどうなっているのか。祝祭日は果たして増えているのか、減っているのか。交通網はどのように。家族そろっての帰省、行楽などは続いているのだろうか。
そんなことを考えてもどうしようもないのは分かっているのだが、なにやら騒がしい5月、日本の未来は?
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