アブダビにおける原子力発電商談の敗退が大きな反響を呼んでいる。前号で示したとおり、軍事協力まで求められるような商談を日本が受注するわけにも行かないのであるが、そういう点についてはあまり注目されておらず、「トップセールスが不在だ」「国の姿勢が明確ではない」などの批判の声が高い。確かに国の原子力輸出に対する姿勢が定まっていないのは課題ではあるが、トップセールスがあったとしても今回のプロジェクトを受注できた訳でもない。「むしろ市場の方が未熟なのだ」という論調もあってしかるべきだ。
とはいえ、確かにいくつかの課題は明確になった。ひとつにはやはり電力会社の姿が見えなかったということ。原子力発電のオペレートはプラントメーカーには出来ない。GE日立はエクセロンを運転支援サポートに据えたが、コンソーシアムには入っていなかった。原子力に関する法整備や人材育成といった準備段階を経た国であれば、GE日立の対応は決して間違ったものではないが、相手は原子力未熟国である。その点はもう少し対応を考える余地はあった。
もうひとつは、プラントのスペックの問題だ。日本は地震国だし反対運動も強い。従って高いスペックが常に要求される。保安基準も高い。それが稼働率の低さにつながっている。しかし相手国は必ずしも、そこまでのスペック、保安基準を求めていないということも考慮し、コストに反映させていく努力をしてこなかったという反省はありうる。そして、こうした軍事協力まで求められるような商談には対応しない、というターゲットの絞込みも重要だ。
実は、水ビジネスにおいても同様のことが言える。日本が運営ノウハウがないのは水道局の海外への姿勢が弱いということに加え、国もこれを統合的に支援する体制の構築がまだ整っていない。さらにメジャーと同じ土俵に立つのか、それとも優位性を活かし段階的に展開するのか、対象地域は?などターゲットが定まっていないのである。
どこぞの副知事は「アンタイドがいかん」と訳の分からない説を唱えているが、そんな暢気なことを言っている場合ではない。
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