原子力発電は世界的にニーズの拡大が続いている。ただ、核物質を扱うというデリケートな部分があり、単純に民間だけで行えるビジネスではない。そこには国家の核不拡散への意思表明および体制整備、民間企業による運転や建設への支援、サポート、規制、管理などが不可欠だ。プラント輸出に関しても、輸出先国の核管理体制、法整備だけでなく、巨額で複雑なプラントの輸出、EPC、ファイナンス、保険などで輸出国側も多くの支援が求められるのは言うまでもない。
韓国がアブダビで同国初の商用原子力発電を受注することができたのは、ウォン安も大きな要因ではあったが、韓国政府の輸出支援体制がしっかりとしていたからだ。イ・ミョンバク大統領が自ら原子力の輸出を指導し、強力なトップセールスを展開し、受注に成功したことは、いかに原子力の分野で国の姿勢が重要であるかを改めて認識させてくれる。
韓国はさらに、今後20年間で80基もの原子力輸出を目論んでおり、今後の同国の輸出産業の大きな柱としていく考えだという。
対して日本では、以前からもアブダビに対して法整備面などで協力してきたにも関わらず、今回GE日立ニュークリアをサポートする力はひ弱であった。コンソーシアムに原子力発電のオーナーオペレータがおらず、運転面での不安があったのも確かではあるが、政府の支援体制も今一つパっとしなかったのも事実だ。
以前、資源エネルギー庁は原子力政策において「国、電力会社、メーカーの三すくみを解消する。そのため国が一歩出て行く」として新たな原子力産業振興を展開しようとした。だが、この動きもその後、うまく盛り上がらず、昨年の民主党への政権交代で、さらに国としての推進力が低下した。与党民主党は今のところ、原子力を否定してはいないが、積極的に推進しようという意思もあまり見えない。「政治主導」という掛け声の下、官僚も積極的に前に出にくい。結局、再び原子力は以前の「三すくみ状態」に戻ってしまっている。
温暖化ガスの25%削減のためには、原子力発電を積極的に推進しなければならない。このためには今こそ、国の意思表示が必要なのである。
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