「アップデートではなく、バージョンアップが必要だ」。エンジニアリング産業は今、革新が求められているのである。
海外のプラントプロジェクトが拡大して以後、実質的にエンジニアリング産業では、いわゆる「革新」がなかったという反省がある。もちろん、日々の業務改善は行ってきたが、この産業を飛躍的に発展させるものではなかった。昨年夏に人材開発関連のヒアリングを行ったが、「過去数年間、積極的に人材開発プログラムを実施できる状況になかった」と人事担当者は口を揃えて言っていた。つまり、過去数年間、エンジニアリング産業では目の前のプロジェクトを消化することしか、実質的にやってこなかったということだ。将来への投資は、蔑ろにされてきたのである。
むろん、そのことは責められるべきことではない。実際に目の前の仕事を如何に失敗なくこなしていくか、というのは、エンジニアリング業の基本である。しかし、次世代を担うべき人材を育てる余裕すら無くなっていた。これが今までの実態だ。
この結果、エンジニアリング産業は、過去のEPCにおける高度化という「改善」はできても、次世代のニーズに対応するための「改革」は、なし得なかった。そのため、「次の市場」「次のニーズ」に対応可能な事業体への変革を担うための、改善とは異なる「革新」が出来てこなかった。それが今、日本のエンジニアリング産業の弱点として意識されてきている。
コストは常に重要な要素ではあるが、それは結果である。プラントが仕様通りの性能を出し、計画外停止があまりないというのも結果である。いわば、これまで我々は結果で勝負してきたといえる。しかし、すでに結果の最善では韓国が優位に立とうとしている。もはや、結果の最善は競争優位に繋がらない。これを打ち破るには、結果ではなく、プロセスの最善を求めていくことが重要だ。プロジェクト遂行の健全性、効率性、安全性、環境適合性、コスト、その全てをプロセスを開示していくことで優位に立つ。それが「プロセスを売る産業」となる。2010年はそういう年になるのではないだろうか。
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