世界的な原子力発電の拡大傾向がいよいよ明確になってきた。中東およびアジアでの導入へ向けた具体的な話が進んできている。当然、世界有数の原子力製作能力、エンジニアリング能力を持つ日本にとっても、チャンスが大きく拡大してきている。
しかし、日本国内で原子力はトーンダウンしている。実質的に電力需要の伸びが見込めないうえ、需要変動対応力に限界のある原子力では、ピーク需要の先鋭化に対応するのは難しい。また依然として国民の間に原子力への不信感がぬぐいきれていないため、各地で反対運動が起こってしまう。高レベル放射性廃棄物の最終処分地がまだ決まっていないというのも、原子力拡大の足かせになっていることも否めない。
特に最終処分地に関しては、世界的にも地層処分が最適とされているものの、欧州では漏水などの問題も発生。それを長期にわたって公表してこなかったため、国民の不信を募らせてしまうという悪い結果となった。米国で期待されたユッカ・マウンテンも計画は中止。再開のメドは立っていない。
改めて、本当に地層処分は正しいのだろうか?という疑問が生じる。300m以上の深度で地下埋設するといっても、1〜2km掘って温泉が出るこの国では、漏水の問題は常に伴う。地下水の流れがないから拡散せず環境への影響はない、という話も、実際に掘ってみたらどうなるか分からない。見えない場所、アクセスしにくい場所でトラブルが起こる可能性は高い。であれば逆に、地上で管理したほうが、よっぽど安全で確実ではないだろうか?放射線の遮蔽は岩盤で、熱の除去は自然循環で対応すれば、従来のように「地下だから大丈夫」ではなく「地上だから大丈夫」と視点を変えてみてもよさそうに思う。
また新しい技術の面から原子力を考えると、例えば小型の高温ガス炉を用いたコージェネシステムや、核熱利用水素製造のプラントを、日本の各コンビナートに配置するのも、新たなニーズとなりうる。さらに、海外での原子力発電でのCDMを認めさせることができれば、日本の温暖化ガス削減に大きく貢献することとなるだろう。 |