EnB 22号 目次
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「競争原理」はあやしい

■REPORT
困難を極めたサハリン1プロジェクト
データ標準化に関心薄い日本企業
外国人雇用で遅れをとる日本

■Global Business
・中東湾岸諸国、大型プロジェクトを再検討
・大宇造船買収、ハンファ・産業銀行MOUを締結

■TOPICS
エクセロンがESBWRの採用を取り消し
スウェージロック、国内販社を統合

■NEWS Flash
・千代田化工、多結晶シリコンプラントの基本設計受注
・酉島製作所、海外受注が好調
・住友重機械、バイオマス100%発電設備受注
・インドネシアの改質褐炭実証プラントが本格稼動
・日立製作所、中国中小企業の省エネ
・環境保全を推進
・日中環境フォーラムで19件の実績
・JBIC/JCOAL、中国石炭火力省エネ化で合同委員会
・JFEエンジ、グループ4社を再統合
・豊田通商、MEWと太陽熱複合発電事業でMOU
・新日鉄エンジ、岡部Mと基本協定
・ABB、海洋事業を1.5億ドルで受注

■Projects News
…サウスパースLNGでロシア等がJV
…韓国勢がアルジェリアで製油所受注
…Ecopetrol、コロンビア製油所を改良
…KBR、エジプトでPEプラントのFEED受注
…Gazprom、北極海LNGでメジャーを招聘
…印IOC、Paradip製油所計画でファイナンス完了
…バグダッドで地下鉄建設計画
…Saipem、アルジェリアでLPGプラント受注
…韓国電力、ヨルダンの原発建設で協力
…Pemex、パラキシレン増強で入札へ
…パプアニューギニアで化学PJ
…ナホトカの新規製油所、来年にも着工へ

■フォーラム

■海外・国内主要プロジェクトの動向

■最近のプロジェクト受注・契約状況

■連載
しらないでは済まされない
海外プロジェクト建設法律のミソ

■エンジニアリングダイジェスト

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EnB 22号 表紙

 

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「競争原理」はあやしい
ここ数年間日本を支配していた新自由主義は失敗に終わっている。「小さな政府」と言いながら結局は郵政を切り離しただけであり、それすらも公社化以上の効果は得られていない。PFIやPPPなど掛声は高かったが、結局政府も行政も小さくはなっていない。一方で市場原理を福祉にまで持ち込んだことで、セーフティネットワークは崩壊しつつある。個人の負担は増えていくが、それに見合う福祉は得られない。競争原理を突き詰めていくなかで、所得格差は拡大し、そして不況の波にさらされ、個人消費は縮小していく。この結果、抜け道のない不況の世界に突入しようとしている、ように見える。

こうしてみると、どうも「競争原理」とやらが怪しいのではないだろうか?と思えてくる。どこぞの知事が教育にまで競争を持ち込んで、なんとか成績を上げようと躍起になっているようだが、おそらく成果は出ないだろう。

プラント業界の大きな流れを見てみると、かつての過当な価格競争で財務状態が悪化していたのに対して、最近はプロジェクトの波はあるものの、以前に比べて収益性は確実に高くなっている。その理由には、プロジェクトが活況で採算性の高い案件しか受注しなくてよいという状況に恵まれたこともある。各企業の財務健全化の努力の成果も忘れてはならない。

しかしそれに加えて、日本のプラント業界が、かつてのような価格競争の状況から抜け出しつつあるということも要因の一つと言える。実際、最近の大型案件は国際入札による受注は少なくなってきている。

考えてみれば、価格競争は比較的付加価値の低いプロジェクトでは有効だが、より規模の大きい、複雑で高度なプロジェクトマネジメントの必要な案件で価格競争は意味がない。いわば、各社のプロジェクト遂行能力、工事品質の高さが最も要求される。そしてそういう会社は世界でもあまり多くはない。従って価格競争にはなりにくい。

競争、競争と言っている間は、付加価値の低い仕事でしかしていない。より付加価値を高めるには競争の前に協調することが必要だ。
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編集後記
○…ノーベル物理学賞の益川さんは日本語で受賞記念講演をされた。英語が喋れなくても物理学はできる、日本語で論文を書いて世界中に読ませてやりたいと言われている。

日本語で、文学・社会・政治経済・自然科学にいたる森羅万象を学び・表現し・創造することは、日常生活の延長で抽象概念を把握し、表現することだ。日本語で抽象概念を表現するようになったのは、明治以降のことだ。それまでは漢文=東亜の共通語で表現していた。高校で習った蘭学事始はオランダ語のターヘルアナトリアから翻訳した解体新書の苦闘の場面が印象に残っている。しかし翻訳した成果は漢文であった。ただし、当時の学者にとっては漢文は日本語の表現形式の一つなのであった。

明治になって漢文の訓読文が漢文から独立して「文語文」となって法律・行政・科学と多くの分野で使用され、西欧事物を導入・翻訳することに成功する。日本語で森羅万象を表現するようになったのだ。

実は日本文使用は外交文書が先行する。外圧契機とも言える。幕府の外交文書は漢文であったが、ペリーが日米和親条約締結に来日した際、米側の要求もあり、幕府は「漢文相止、和文を以て主」とすることとし、初めて和文の条約文も作成した。これは候文の条約であったが、以降の諸条約は訓読文による和文条約が締結されている。

○・・・内閣府がつい最近発表した08年7〜9月期国内総生産改定値は、内需、外需とも2・四半期連続の総崩れ。景気の急速な悪化を裏付けた。

景気悪化への対応もままならない政治の混迷をみるにつけ思うことがある。我々は「大きな政府」を目指すべきではないかと。また、悪者扱いされてきた「公共事業」を今こそ増やすべきではないかと。

こんなことを言うと、行財政改革を推進し、小さな政府を目指してきた時代に逆行する考えだと指弾されるかもしれない。確かに逆行する。だが、その「大きな政府」すべきというのは、組織・官僚を増やせと言っているのではない。納税者に提供する公共サービスを拡大せよということだ。そして、「公共事業の拡大」といっても、無駄なものをやみくもに造れと言っているのではない。何とか既得権益を死守しようとする輩を排除する方策は必ずあるはずだ。政治家の票に結びつく道路、新幹線だけがインフラ整備ではない。

さらなる景気悪化が懸念される今こそ、新たな公共事業を模索すべきだ。
どこに財源がある、という指摘もあろう。が、例えばPPP方式の事業がある。工夫次第で既得権益は排除できる。いま、内需拡大しか有効な景気対策はないのではあるまいか。
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