○…国が行う公共サービス、その「市場化テスト」の実施状況がはかばしくない。当初予想していたが、やはり中央省庁の抵抗が根強いのだろう。 第三者機関である官民競争入札等管理委員会が3月末に市場化テストに関する「スコアカード」の公表を行った。それによると、Bは厚労省だけ。Cが総務省と経産省である。国交省、農水省、文科省など他省庁は軒並みDの格付けである。Bの格付けを得た厚労省にしても、ハローワーク事業などもともと民間に任せてもいい分野と考えていた事業での実施である。 公共サービスの質の向上、経費節減などを目的として従来官の分野であった事業に競争原理を持ち込み、官民が競争入札を行う「市場化テスト」は、「小さい政府」を狙ったものだ。通常の民営化とは異なる点がある。あくまで最終責任は官にある。 けれど、当然のことながら「市場化テスト」にそぐわない公共サービスもある。警察・消防などの分野である。また、何が何でも「小さな政府」をという点には異論もあるだろう。しかし、日本の風土に深く根ざし、多くの弊害をもたらしている「官尊民卑」という意識を打破する一つの契機になる効果もあるのでは? 中央省庁も真剣に市場化テストの土俵に登るべきだ。
○…宮内庁が学会に初めて、天皇陵古墳の立ち入り調査を許可し、実施された。奈良市の神功皇后陵として管理されている五社神古墳に、日本考古学協会など考古学・歴史学など16団体が外観による調査を実施したもので、発掘は許可されていない。そもそも天皇陵が天皇家の信仰の対象とだけされ、国民の文化財として扱われていないのは極めて遺憾なことだが今回の措置は一歩前進ではある。4月5日にその研究成果が発表されたそうだが、「埴輪の列の跡や墳丘の詳しい形が新たに分かった」という。多分考古学的な築造時期を明らかにする新たな手がかりとなりそうだ。 古代の天皇陵の所在は古事記・日本書紀と平安時代の延喜式に記載されており、中世以降所在不明となっていたものだが、現在の陵墓指定は江戸時代・明治時代に比定したもので、現在の歴史学・考古学の水準からおかしなものも少なくない。 神功皇后陵もその一つだ。延喜式と神功皇后陵が判明していた時代の文献からいって神功皇后陵は五社神ではない。五社神は古墳の編年からいっても4世紀半ば〜後半の神功皇后の時代より古く編年されている。今回の調査はこのことを裏書することになろう。筆者は五社神に葬られたのは、3世紀後半の垂仁皇后日葉酢媛だと思う、初めて埴輪を祀ったという記紀説話がある墓だ。
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