○…「私は東京電力の対応は遅いと思う」中越沖地震で柏崎刈羽原発での報告遅れに対して安倍総理が言い放った。参院選の直前のことであり、ここで「指導力」を見せたかったのかも知れないが、これはあまりにも無責任な発言だった。 原子力発電が国策である以上、首相とは原子力の「当事者」なのである。東京電力を叱るより先に、原子力発電の被害状況の把握と対策のための支援をいち早く打ち出さなければならなかったのだ。何といっても、東京電力も「被災者」なのだという意識が全くなかった。しかも加速度が想定の2倍以上という揺れにもかかわらず、原子炉そのものは安全に停止し、原子炉からの放射線漏れも観測されなかった。これは原子力発電というシステムがいかに安全であるかを改めて示したものであった。そういう説明をできなかった以上、東電の原子力関係者は「国に裏切られた」ようなものである。 その一方、直下型地震をまともに食らったのだから、当然ながら構造物としての被害は免れない。原子炉は岩盤まで基礎が達しているのでほぼ問題なかったが、周辺設備はそこまでの耐震性は持っていない。そこで変圧器の火災やごく微量の放射制物質の漏洩が発生した。こうした原子炉周辺の耐震性は見直されるべきかもしれない。
○…自民党が参院選で大敗した。大敗の責任を取らない首相の出処進退は美しくない。相次ぐ閣僚の不祥事や年金問題への国民の不信、それらへの首相の対応のまずさなど敗因はいくらでも数え上げられる。首相への不信任は紛れもない しかし一人区での大敗は構造的な変化が進行していることを示す。農村地区での自民党支援組織の破壊だ。小泉改革が農村への資金の流れを絶ち、市町村合併が自民党を支えていた議員を減らした。 自民党の大規模農家農地集約化政策に対して、民主党が個別農家に対する所得補償制度を参院選の公約としており、参院に関連法案を提出するという。大規模農家のみを担い手とする農業再生に対して農政の転換を迫るものだが、バラマキ農政という批判をかわせるか、未知数の部分も多い。国民の食糧と国土の環境を支える農村の再生=美しい故郷の再生がどのような政策で実現できるのだろうか。 世界の産業は炭酸ガス削減をコストに織り込むことを甘受しはじめている。米国やブラジルはカーボンニュートラルのバイオ燃料振興政策の大義として農業振興とエネルギー自給も挙げている。わが国も国産原料によるバイオ燃料振興政策は農業再生の一環として検討に値する課題かもしれない。
|